|
|
|
|
No.37 2007.10.13 |
|
|
|
|
|
記録的な猛暑が続いた今年の夏、夜中に突然足が痛くなり、翌朝クリニックを受診した方が大勢いらっしゃいました。長年の高尿酸血症が原因で起こる痛風発作です。痛風は、足の親指のつけ根が腫れて[ 図1]、激痛をおこすのを特徴とする病気です。以前は美食家の中年男性におこる病気と思われていましたが、食生活の変化から、最近では20〜30歳代の若い世代にも珍しくない病気になりました。高温多湿の夏に多く発病しますが、日ごろから尿酸値が高いと言われている方は、秋の味覚やお酒が美味しいこれからの季節も注意が必要です。
|
 |
←足の親指
第二関節
(70%) |
|
| 〔図1〕 |
|
痛風の原因は?
肥満や食べ過ぎ・飲み過ぎからおこる高尿酸血症が原因です。尿酸は、食べ物や体の組織に含まれる「プリン体」と呼ばれる成分が分解されて作られる代謝産物です。尿酸は正常な血液中にも一定量含まれていて、余分なものは便や尿中に排泄されます。尿酸値が高くなると、血液中に溶け切れなくなった分は、針状の結晶を作って関節内面などに沈着します。結晶の沈着が増え続けると、一部がはがれ落ちて白血球と反応し、急性の炎症がおこります。これが、激しい痛みや腫れを引き起こす痛風発作です。
血液中の尿酸値が7mg/dlを超えると高尿酸血症と診断され、この状態を長年放置しておくと痛風発作をおこすことになります。
最近、“プリン体カット発泡酒”といった表示をよく見かけますが、「プリン体」とは細胞の核を作る核酸という物質の主成分です。
また、からだのエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)の原料にもなる大切な物質です。卵と牛乳から作るプリン(pudding)とは無関係です。
「プリン体」は細胞の核に存在するので、ほとんどすべての食品に存在し、細胞数の多い食品に多く含まれています[表1]。「プリン体」は食品から取り込まれるだけではなく、体の細胞の新陳代謝細によっても作られます。食事から取り込まれる「プリン体」は総量の1/3程度と言われています。したがって、高尿酸血症は「プリン体」の摂りすぎだけではなく、食事を含めた、生活習慣全体の乱れが原因と考えられています。
|
|
|
〔表1〕 食品中のプリン体含有率
|
食品 |
プリン体の量
(mg/100g) |
| きわめて多い食品 |
煮干し
かつお節
干し椎茸
豚レバー
牛レバー
マイワシ |
339.6
212.5
186.1
128.2
101.8
93.9 |
| 比較的多い食品 |
カツオ
車えび
サンマ
マグロ
鶏ささみ
牛ヒレ
豚ロース |
90.3
85.5
68.0
67.2
67.1
42.3
39.9 |
| 比較的少ない食品 |
大豆
ほうれん草
かまぼこ
白米
カズノコ |
34.0
26.6
12.2
12.6
10.5 |
| ほとんど含まれない |
小麦粉
プロセスチーズ
鶏卵
牛乳 |
7.7
2.8
0
0 |
|
|
|
|
|
|

〔図2〕
|
痛風は、圧倒的に男性に多くみられます。これは女性ホルモンには腎臓からの尿酸排泄を促す働きがあり、尿酸値が上がりにくい傾向があるからです。
痛風発作のほとんどが足の親指の付け根(70%)に起きますが、足首、膝、ひじや手など、どこの関節にも起こる可能性があります。最初の発作の約90%は足の指の関節周辺で起こると言われています[図2]。
|
|
|
痛風は何がこわい?
痛風や高尿酸血症は急性の関節炎をおこし、耐え難い痛みを生じますが、命に関わるようなことはありません。しかし、長い間には尿路結石を作ったり、腎臓機能に障害をおこすことがあります。さらに、高血圧、糖尿病、高脂血症など他の生活習慣病を併発することが多く、動脈硬化を進行させて、脳血管障害や虚血性心疾患など危険な合併症をおこす可能性があります。
痛風の予防と治療
生活習慣の改善と内服薬で高尿酸血症と痛風は治療できます。尿酸値を上げないために生活面で注意すべきことは、
1) 肥満の解消
痛風は太った人に多い傾向があります。肥満の人が体重を落とすと、尿酸値も下がります。ただし、極端な食事制限では、尿酸値を上げることもあるので、徐々にゆっくり行なうのが良いでしょう。
以前はプリン体を多く含む食品の制限が第一と思われていましたが、最近は総摂取カロリーの制限がより重要と考えられています。体内で作られるプリン体の方が、食べ物から摂取するプリン体量よりも多いからです。とはいっても、もちろんプリン体を多く含む食品に偏った食事は良くありません。一日のプリン体摂取量を400mg以下に制限するのが良いとされています。
アルカリ性食品は尿をアルカリ性にして、尿酸を溶けやすく効果があります。海草類や野菜が良いでしょう。
2) 飲酒は控えめにする
プリン体を多く含んだビールの大量飲酒は痛風を起こしやすくすることが知られています[表2]。プリン体が少ない焼酎やプリン体カットの発泡酒なら安心と思われている人が多くいらっしゃいます。しかし、アルコールには肝臓で尿酸が作られるのを促進する作用があり、アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドは尿酸の排泄を妨げます。また、アルコールによる利尿作用は脱水をおこしやすくし、尿酸値を上げる結果になります。したがって、お酒の種類やプリン体含有量にかかわらず、アルコールの大量摂取は高尿酸血症や痛風の原因になります。
適量の飲酒は問題ありません。アルコールの適量は、ビールなら中びん1本、日本酒で1合、ウイスキーではシングル2杯程度です。週に2日以上の禁酒日が適当です。
|
|
|
〔表2〕 アルコール飲料のプリン体含有量
|
アルコール度数 |
プリン体含有量
(mg/100g) |
ビール(S社)
地ビール(O社)
発泡酒(S社)
プリン体カット発泡酒(K社)
日本酒
ワイン
ウイスキー
焼酎 |
5.5
5.5
5.5
5.5
12-18
10-16
37-50
20-44 |
5.12
10.50
3.30
0.10
1.21
0.39
0.12
0.03 |
|
|
|
|
|
|
3) 水分を多めにとる
脱水状態になると血中の尿酸値をあげる原因になります。高尿酸血症を指摘されている方は、季節を問わず、毎日2リットル以上の水分を摂るようにしましょう。尿量が多ければ尿酸は溶けやすくなります。
4) 適度な運動をする
ウォーキングなどの有酸素運動は尿酸値を抑えるほか、高血圧や糖尿病などの合併症治療にも有効です。しかし、激しい運動は尿酸の酸性を上げる結果になりますので注意が必要です。
5) ストレスの軽減
慢性の疲労やストレスは体内のプリン体を過剰に作り、尿酸値を上げる原因になります。休養とリラックスでストレスを解消して下さい。
高尿酸血症は食事・運動などと深く関わった生活習慣病です。アルコールのみ過ぎ、肥満、運動不足の人に多いことがわかっています。食生活の改善、適度な運動を心がけて下さい。尿酸値が高いかどうかは血液検査で確認できます。尿酸値に不安のある方は当院にご相談下さい。
|
|
|
|
|