トピックス

“孤独死を防ごう”プロジェクト ~高齢化社会に向けた私共の取り組み~

No.53|2014年4月5日

◆一人暮らし高齢者の増加の現状◆

 我が国の一人暮らしの高齢者は過去10年間に急増しており、5年毎に行われる国勢調査の結果、平成12年度では、その数は男性74.2万人、女性229万であったのに対し、2020年には男性179.1万人、女性360.5万人に達すると見込まれています。 私達のクリニックでは在宅医療(往診診療)を行っていないため、何等かの病気を有する高齢者の方には体力的に可能な限り、自力で定期的に外来通院していただいていますが、通院が困難になった場合には往診専門医に診療をスムースにバトンタッチする様心掛けています。長年拝見してきた患者様で通院が困難となりながらも私共への継続治療を希望されている患者様は家族やヘルパーに伴われて受診されます。しかしながら必ずしも恵まれた環境にない高齢者も多く、肉体的、精神・神経的と思われる理由により突然外来に来れなくなり、高血圧、糖尿病、呼吸器、心・脳血管障害に対する治療が中断され病状の悪化や最悪の場合、孤独死に至る症例も経験しています。

 

◆介護保険制度と孤独死対策の問題点◆

 介護度が高い高齢者に対しては公的な生活支援により十分とは言えないまでも必要に応じた介護や在宅医療による疾患への対応がなされていますが、比較的自立度が高くまた認知機能も保たれているため介護保険の恩恵を受けられない多くの独居高齢者が日常生活への不安と将来への希望を失って鬱的になり医療機関に行かなくなる傾向も見られます。また個人的な印象として3.11以来このような高齢者が増えている様に感じます。 独居老人の孤独死が社会的問題になって久しく、新宿区の限界集落と言われる外山団地で早くからNPO法人による独居者に携帯電話を持たせ、いざという時にコールセンターに連絡する事により孤独死を防ごうとする試みが行われてきましたが、主催者に聞いたところでは残念ながら上手く行っていないようです。その要因として、

① 高齢者が異常を自覚した時にこの程度の事で連絡すると迷惑になるのではないかという意識や他人に連絡する事の煩わしさで自ら連絡する事を躊躇してしまう事。

②手渡された携帯やスマホ等の機器をいざという時上手に使いこなせない事。また体調の急変時にはパニックになり、使用が益々困難になるおそれがある事。

③新規のサービス付高齢者住宅等では各メーカーが提案している室内動作確認等の見守りセンサーの設置が容易ですが、老朽化した住宅では設置に技術的問題があり、また高齢者にとっては日常生活の中で動作を逐一モニターされている事に関してプライバシーを覗かれているという一種の嫌悪感がある事。

④見守りシステム構築に関わる費用が現状では高額であり、富裕層であれば自己負担によって一般住宅や集合住宅を問わず現状の各種サービスを受け入れる事が可能だが年金収入に頼る一人暮らしの高齢者の2~3割以上が年間所得が120万円未満であり、これらの人々に見守りシステムを導入する際に、自己負担を求める事は困難である事。そのため介護保険の枠を超えた公的な補助やNPO法人等の支援が必用となりますが現状では適切な対応がなされていない事。の4つが挙げられます。

 

◆独居高齢者の支援について◆

 費用面の問題点として自治体の介護支援は広く一律に分配する事が原則であり、新宿区の限界集落の様な一部の地域を特区として公的に補助する事は認められていません。 また総論的に支援の意図に賛同する企業や団体は少なくないが、バブル期のようなメセナやフィランソロフィー活動が活発な時代と異なり経済が低迷している現況では参画した運動から一定の利益の見返りがない場合には各企業とも寄付金や補助金を拠出する余裕がなく、慈善事業に頼る事は困難となり各論の段階で行き詰まっています。 今後は見守りシステムの構築に関し良いビジネスモデルを創出しすべての参画者に“win win”の関係となるプロジェクトを提案する必要があると感じています。

 

◆遠隔見守りシステムについての提案◆

 私は数年前から独居高齢者の見守りの必用性を認識し、これらの問題を解決しうる手段はないか愚考してきましたが、唯一の手段は適切なICTを用いた遠隔見守りではないかとの考えに至りました。 そこで現在、未解決の多くの問題がありますが前記した ①~④ の問題を少しでも解消しうる見守りシステムを検討し始めています。具体的には高齢者にとって完全に非拘束性かつ簡便であり、自ら意識する事なく生体情報が正確に常にモニターされるセンサーが必須です。現在マットレスや布団の下に置くだけで夜間就寝時の心拍・呼吸・離床着床の生体情報をリアルタイムに正確に感知するセンサーユニットからクラウドサービスを用いて遠隔見守りを可能とする装置を開発した業者(バイオシルバー社)と共同研究を進めています。 バイオシルバー社製の上記の製品は未だ介護保険の認定を受けていませんがより簡便かつ安価な姉妹品製品(離床センサー迅速)は本年1月に介護保険の認定を受けています。集合住宅であれば介護士・看護士の監視センター、一般住宅であればクラウデイングを利用したコールセンターを通じて家族や主治医が遠隔見守りする事が可能となります。このシステムを用い、緊急の事態が生じた場合には消防、訪問看護士、在宅往診医との連携で対処する事を想定しています。 高齢者の突然の心・血管事故はトイレの中や入浴中も多く閉鎖された特殊な環境下での生体情報のモニターも重要であり、様々な研究施設や企業が取り組んでおり、私達も検討しています。しかしながら聞き取りをした処、多くの高齢者や離れて住む家族にとって日常活動の約1/3の時間を占める就寝中に起こる異常に最も強い不安を持っており、見守りモニターに関しては生活を覗かれていると感じる嫌悪感も就寝中では少ないようです。

 

◆システム構築に関する諸問題と展望◆

 技術的には完成度が高い遠隔見守りシステムですが最大の問題点は実際の運用に関わる費用であり利用者一人当たり約10万円を見積もっていますが個々の利用者の自己負担が月に5000円を超えると実際の運用は困難であると考えています。機器は全てレンタルを想定しており最も高額となるのはクラウドシステムのソフトウェアですが利用者が多くなると各負担は軽減し、100名の利用者となった場合には各自己負担分は600円程度となります。 見守り機器のハードウエアー、クラウデイングに関わる諸費用の他、モニターを監視するコールセンタースタッフや、生体情報アラートの内容を専門的に鑑別する医療スタッフの人件費も考慮に入れなければなりません。遠隔見守り事業は原則として利用者が終末を迎えるまで継続される無期限のものであり、これらの費用を長期に亘って個々の医療機関や事業施設のみで対応する事は負担が大きく現実的ではありません。 独居高齢者のサービスに関わっている、宅配弁当業、セキュリテイ関連業、介護事業、訪問看護ステーション、在宅医療機関等多くの企業、団体に参画していただき, All for One で包括的なシステムを構築する事により利用者及び個々の負担を軽減できるのではないかと考えています。各団体、施設の参加を希望します。         

 

                  ヒロオカクリニック                   理事長  弘岡泰正

 

このプロジェクトに興味をお持ちの方、参加ご希望の方はこちらまで⇒ silver@h-cl.org

トピックス一覧に戻る