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あけましておめでとうございます ~本年もよろしくお願い致します~

No.12|2002年1月1日

今年は三方一両損なる患者、保険加入者、医療機関の三者に痛みを分ける医療制度の改悪がスタートします。国民的大人気の小泉首相は聖域なき構造改革を掲げていますがこれは医療に関しては改革等という立派な将来にわたる青写真ではなく、単なる赤字の国民医療費のつじつま合わせにすぎないように思います。

 

中国に負けない為にとの事で有人宇宙飛行の国家プロジェクトの計画があるそうですが、この経済的非常時にロケットだからと言って足が地に着いてない話しでどこかの国の首領様の打ち上げたコメントかと耳を疑いました。技術立国、科学立国もよいのですが四国に巨費を投じて不必要な橋を何本も渡したような開発事業、ふる里創生、地域振興券などの愚策で血税が使われたのではたまりません。

 

諸外国からも羨まれる国とは今や経済大国や軍事大国ではなく、国民がそれほど豊かでなくとも安心して暮らせる教育、医療、福祉が完備した社会を持つ国であると思います。不必要な国家予算の無駄を省き、三方一両得の医療制度がうち立てられる事を祈っています。

 

さて昨年の夏、中米のコスタリカに旅し、印象的な事がありました。コスタリカは中南米の国の中では政治的にも安定し経済的にも比較的恵まれている国と言えますが我が国とは比べようもなく貧しい国です。観光に依存しており、ジャングル保存の環境的配慮もあり道路も舗装されていない所が多く、農民の親子が大きな荷物を担ぎ山道を裸足で歩いていました。

 

ところが首都のサンホセには世界でも有数と現地の人が誇りにしている国立の小児病院があります。また郊外にはメキシコの援助で建てられた近代的な病院がありました。大きな建造物は開発途上国では教会と病院と学校、サッカー場が目につきますがコスタリカも例外ではありません。

 

コスタリカの一人あたりのGDPは日本に比べ5分の一程度で遙かに低いのですが国家予算の3分の一が教育に費やされ、医療制度も驚くほど整っています。このため内戦が続き国土が荒廃した隣国のニカラグアから難民が国境を越えてやってきますが、この難民達にも自国民と同様の医療をただで施しているのです。また難民の妊婦もコスタリカで出産すると子供はコスタリカの国籍を得て様々な権利を得ることが出来るので大きなおなかをかかえて山や川を越えてやってくるとの事でした。

 

国家的大英断で1949年に軍隊を廃したこともあり、予算配分の面で福祉に有利な事があるにせよ日本よりも経済的に困窮している国が医療福祉を聖域として隣国の難民の痛みさえとる努力をしているのです。難民受け入れについての政治的問題は議論のあるところですが、医療、福祉に対して原則を守ろうとする国家の取り組みに感動しました。

 

終戦後四国の山奥で開業していた父の患者は貧しい人も多く、布団を積んだリヤカーに病人を寝かせて父の診療所まで何時間もかけて連れて来た家族も少なくありませんでした。もっと山奥からの患者は到底来院できないので診療所の裏や空きやに泊まり自炊しながら父の診療を受けていました。健康保険の自己負担分のお金の持ち合わせのない人は野菜や川魚、餅などをおいていった事を思い出します。

 

国民皆保険のもとで貧しい人もどの様な場所でもそれなりに治療を受け社会復帰して行きました。医療の現場は痛み、苦しみから解放されることを望む患者と奉仕の心を持ちその解放の手助けをする医療者の聖域です。

 

国やぶれて山河あり、障子破れてサンばかりではありませんが政治が長期的な経済政策の失敗を医療に振り分け、痛み分けなどという大雑把な言葉で片付け、医療、福祉などの国民の生命を危うくする政策が実行され続けるならば国家のサンではなくフレームワークが危うくなろうであろうと危惧しています。緒方前国連高等弁務官も教育と医療を将来に繋げる最も重要なものとして位置ずけるコメントを述べています。

 

医療情勢は益々厳しくなりますが私たちのクリニックは今年も皆さまの健康の維持のお手伝いに職員一丸となって努力する所存です。本年も宜しくお願いいたします。

 

平成14年 元旦

 

ヒロオカクリニック院長  弘岡 泰正

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