トピックス

Ⅹ線とレントゲン ~ホント…ものすごく役に立ってるんです~

No.16|2002年6月24日

エックス線検査と言われてもピンと来ない方でも、レントゲンと言われると「ああ、あれか…。」と思われる方も多いと思います。これは、エックス線を発見(1895年)して世界初のノーベル物理学賞に輝いたドイツの物理学者、ウィルヘルム・コンラッド・レントゲン博士(1845~1923年)にちなんだ呼び名で、全く同じものです。日本では(特に医療では)レントゲンという呼び名が浸透していますが、世界的にはレントゲン博士が名付けたとおり、エックス線(X-RAY)と呼ばれています。ちなみに“X-RAY”とは、目に見えない正体不明の(=X)、光線(=RAY)という意味で名付けられました。

 

エックス線は電磁波の一種であり、私たちが目で見ることが出来る光(可視光)よりも波長が短く高エネルギーで、物質を透過する性質があります。これよりもさらに波長の短いものが放射性同位元素から放出されるガンマ線です。ガンマ線は一部の限られた検査や放射線治療に用いられますが、放射性同位元素の取り扱いや、半減期による線量補正など管理が非常に大変です。一方、エックス線は電気を使って人工的に作り出す放射線で、ガンマ線に比べると管理が容易で、必要なときに必要なエネルギーを必要な量だけ発生させて使うことができます。

 

普段点けたり消したりしている電球と同じ感覚です。スイッチを入れて電極に通電した時だけ光が出て(目には見えませんが)、スイッチを切れば消えます。もちろん空気中に残ったり、漂ったりすることもありません。このほか医療で扱う放射線にはアルファ線やベータ線がありますが、これらは粒子線と言って電磁波とは区別されます。

 

このレントゲンの発見から僅か百年足らずしか経っていませんが、エックス線の利用は医療の分野では画像診断として無くてはならないものとなり、現在もなお検査法や検査技術は発達の一途をたどっています。それまで実際に体を切り開いてしか見ることができなかった骨や臓器の様子が、画像として見ることが出来るようになったことは画期的なことでした。

 

ただし、エックス線写真というものは元々三次元のものを二次元化した画像ですから、体の胸側にあるものも背中側にあるものもすべてが重なった画像になります。それゆえ専門知識のない人が写真を見ても何が写っているのかよくわかりません。この画像を理解するには通常の解剖学の他にエックス線解剖学という学問が必要となります。また昨今ではこの分野もデジタル化が急速に進み、コンピュータの演算処理能力の飛躍的な発達により、CT検査などの生データを再構成することにより、さまざまな断層面の画像を見ることができたり、擬似的に三次元の画像を作成して一層リアルな立体画像を観察できるようになっています。

 

エックス線検査技術は、被爆の観点からも大きく進歩しています。従来エックス線画像を記録するためには、フィルムが用いられてきました。レントゲン博士がエックス線を発見した当初から、蛍光体を発光させたりフィルムを感光させたりする作用があることがわかっていましたから、古くから記録媒体としてフィルムが使われたわけです。しかしながら、エックス線による感光だけでは多量の放射線量が必要でした。

 

そこで考え出されたのがフィルムを蛍光体のシートで挟む方法です。この蛍光体のシートを増感紙(スクリーン)と呼び、エックス線があたると蛍光(可視光)を発し、フィルムを感光させます。この「スクリーン・フィルムシステム」は現在も使われており、エックス線撮影のときに下に置く板の中身は増感紙でフィルムをサンドしたものなのです。このシステムを用いることで、よりすぐれた増感紙の開発と、フィルム感度の増加によって被爆量を大きく減らすことができるようになりした。

 

体を通り抜けてきたエックス線がフィルムに写るわけですから、このシステムの感度が低いと多くのエックス線を照射しなければならず、感度が高いと少ないエックス線ですむわけです。それに照射するエックス線のエネルギーを高くしてやると、体を透過するエックス線の割合が多くなりますから照射する量は少なくてすみます。また、フィルムを現像する時の現像液の温度とも密接な関係があります。

 

上記三点の事象を合わせてシステム感度といいますが、これは医療機関によって異なります。システム感度を上げてゆくにしたがって、照射するエックス線の量は少なくできますが、逆に画質が悪くなってしまうといった問題があります。被爆を重視するあまり、疾患を見逃してしまうようでは本末転倒ですし、疾患や臓器によっても必要とする画質が異なるため、通常は各医療機関で独自に画質設計を行い、撮影を行う際のシステムの組み合わせや、照射するエックス線のエネルギーや量を検討し最適化をはかっています。したがって、胸部の写真一枚撮るにしても、被爆する量は、実際には医療機関によって異なります。

 

この被爆の問題も、デジタル化によって変わりつつあります。デジタル化するとフィルムを記録媒体として使う必要がなくなりますから、フィルム感度による照射線量の依存がなくなります。また、得られた画像データを後で画像処理をおこなう事によって目的とする条件に合わせたさまざまな画像を作ることが出来ますから、フィルムだと撮影条件を変えて何回も撮影するような症例が、一回の撮影で済む場合も考えられます。ソフトウェアや画質処理技術、検出器の進歩等により、今後いっそう被爆量は軽減できるものと期待されます。もともと医療での被曝はその使用目的や使用する量からも健康上問題ないレベルではあるのですが、やはり少しでも少ないにこしたことはありません。

 

つづく…

 

診療放射線技師 青野

トピックス一覧に戻る