いつも同じがいい

 私は起床、洗顔、朝食、家を出る時間、乗る電車、職場への到着時間が決まっています。

世の中には同じ習性の人がおり、乗車するなり瞑想に入る大仏顔のオバサン、乗客を品定めするような目つきで一瞥する築地からの仕入れ帰りの大将、日経新聞を読みふける証券会社の美人OL,薬が効いてきたのか頭頂に次第に生えてきたウブ毛が楽しみな青年、到着駅で不思議と目覚めるいつも真上を向いて大口を開けている爆睡オヤジ、深刻な表情で隠すように読んでいるスポーツ新聞がいつも風俗欄の一見紳士風の御仁、ネクタイが似合っていないサザエさんに出てくるアナゴさん似のオッサン等、朝も早からご苦労さんのご常連の労働者諸君一同のいつもの顔ぶれに出会うと不思議と安心するのです。

 

 

 

 日々変化を求める革新的な人もいますが、保守的な私は何時も同じ状態に身を置く事が心地よいのです。電車仲間がどこの誰かは知りませんが、見かけない日には「体調でもくずしたのかな?」と余計な心配をしてしまいます。偉くなる人は通勤時間を無駄にせず読書や勉強に費やすそうですが、凡人の私は毎朝あまり生産的でない人間観察を楽しんでおります。

 

 

 

 さて電車を降りて職場までの途中に、Fバーガー屋さんがあります。場所柄でオネエ言葉のひげ面朝青龍もどきや、仕事明けの2丁目の“淑女達”がたむろしている事もありますが、何時の頃からかここのコーヒーが気に入り、私はこの店で決まった時間に“持ち帰りコーヒー”を買う習慣になりました。15回で一回分がただになりケーキのおまけがつくサービス券に毎回ハンコを押してもらうのを楽しみで毎日通っています。ところである時から私が店に入るとコーヒーが紙袋に入って用意されているようになりました。始めは店長さんが始めたようですが、店員さんたちに申し送られ新顔の可愛い女の子もにっこり笑って用意したコーヒー入りの紙袋を渡してくれます。店を出るとき「有難うございます。いってらっしゃい。」という挨拶を背中に受けて「さあ今日も頑張るぞ。」と気合を入れるのです。

 

 

 

 ところで心臓外科時代の恩師であるS教授も時間に厳格な立派な人でしたが、何と在任中の昼食は7年間毎日店や物の親子丼でした。日替わりメニューの凡人の私は、飽きもしないで旨そうでもない丼物を毎日食べ続ける教授を少し変なおじさんと思っていましたが、何事も継続する人はたいしたもので、彼はその後文化功労賞を受賞しました。受賞理由は定かではありませんが、少なくとも鶏肉食文化に貢献したとの理由ではなさそうです。

自らのスタイル変える事無く継続する事により大記録を打ち立てているイチローは、毎日朝カレーだそうですが立派な人は食うものが違います。

 

 

 

 ところで「何事も形から入るのが重要である。」とは努力の割になかなかメタボが解消しないAさんの言葉ですが、立派な人を真似て同じ物を食べ続けるだけで偉くなる事が出来るのでしょうか? あたりまえの事ですが物事はそう簡単ではなさそうです。

最近少しボケがきた患者のB爺さんが「わしは85年間毎朝日決まって納豆に味噌汁を食っておる。」と自慢しているのを聞いて、この人は周囲に迷惑をかけている割にはあまり偉くなっていないので、もう少しモデルケースを検討する必要があると思っています。

 

 

 

 

理事長 弘岡泰正

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