こんにゃく問答

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 昭和30年頃、NHKテレビで「こんにゃく問答」という人気トーク番組がありました。

長屋のご隠居の徳川無声老とちょっと足りない店子の柳家金五郎が時事問題に関してトンチンカンなやり取りをする番組でした。

 例えば「ご隠居さん、最近アンポハンタイ・アンポハンタイと世間が騒がしいがありゃいったい何だい?」と金五郎が聞くと、したり顔のご隠居が「金ちゃん、それはお前さんの聞き間違いだよ、あれはアンポンタン・アンポンタンといっているんだよ。」と答えます。金ちゃんは感心して「ヘエ~ご隠居はさすがに物知りだ。」というような小学生にはわけの判らない高級なトークでした。

 

 

 さて小生の外来も時々金ちゃんのような患者様が登場して驚かされます。ある日の事、「Aさん診察室にお入りください。」とマイクで呼び出しますと屋台のたこ焼きを生業にしているAさんが「へ~い。」と言いながら亀のように首を突き出しびっくりしたようなどんぐりマナコで部屋に入ってきて言いました。「先生、今日は何で俺はここに来たんだい?」・・・・・一瞬私は言葉を失いましたが、気を取り直して「あんた夏ごろ水虫がどうのこうの言うとったがまた痒いんのと違う?」と聞くと、アーそうそうといいながら汚い足を出して見せながら、「あれっつ!違う違う。」と言いながら、「思い出した注射!注射!」と叫びます。Aさんは近々ある病院でインターフェロンの治療を開始する事になっており、助成金の申請書が送られてきたのですが、同時期に区からインフルエンザの用紙が送られ書類が苦手のAさんは大混乱です。

 

 

 Aさんより少ししっかり者の奥さんにクリニックに行って先生からきちんと説明を受け、インフルエンザの予防注射もしてくるように言い付かって来たのです。山になりつつある次の患者さん達のカルテを横に見つつ血圧が少しずつ上がり始めた小生はAさんのペースにはまらないよう心を鎮め、しっかりインフルエンザとインターフェロンの違いを説明したのです。思わず「私をほめてあげたい。」と心の中で思いました。判ったのかどうか分りませんが一応神妙な顔で聞いていた村上水軍の末裔と自称するAさんはふんどし姿でザンバラ髪になれば海賊そのものの様な日に焼けた笑顔で「どうも。」と言って帰っていきました。

 

 

 数日後、寒空の中、屋台でたこ焼きに精を出すAさんを見かけました。ホームレスの相棒が傍らでキャベツのきざみを手伝っていました。Aさん頑張ってね。

 

 

 

 

 

理事長 弘岡泰正

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