めだかER

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 ある日、出入りの植木屋の爺さんが「置き場に困っているのでこの庭においてはどうか?」と言って直径、深さ50cmもある立派な素焼きの壺を持って来ました。庭隅のハナミズキの下に置くと地中海の島から発掘されたような色のテラコッタのつぼが新緑に映えて中々に美しく、爺さんは「やっぱり見立てどおり!」とタバコをふかしながら得意顔です。一週間ほどして今度は水草と、めだか20匹をビニールの袋にいれてやって来て「この壺には水を張り、水草を浮かべてめだかを飼うのが最も似合う。」と言うのです。

我が家では生き物は家族3人の人類の他はあえてお世話する必要も無い神出鬼没のゴキブリと庭を我が物顔に占拠する藪蚊ぐらいのものです。たかがめだかとは言え生き物を飼育するとなるとそれなりの覚悟が必要です。爺さんは「な~に時々餌をやってほっとけば自然に増えてくるよ。」と簡単に言いますが念のためネットで調べると結構大変そうです。

案の定、翌朝には5匹の死骸が浮いており、出勤前の忙しい時間に蚊に刺されながら毎日水を入れ替えたり、餌をやったりしたのですが1週間もするとめだかは全滅してしまいました。

 私はすっかり意気消沈し、「自分には生き物を飼う資格は無いのか? これからはもうタタミイワシは食えない!」等とわけのわからない事をくちばしり、めだかのいない壺を見つめていたのです…。

 

 

 

 しばらくしてその悲劇的な話しを診療の合間に“めだか好き”そうな?患者さんにしたところ、「悲しそうな先生を見るのは私もつらい」との事で驚く事に翌朝一番で、ビニール袋の中を元気に泳ぐ15匹のめだかを届けてくれました。ところがすぐに洗面器にでも移しておけば良かったのですが忙しさにかまけてそのままにしていると夕方にはビニールの中のめだかは弱り始めました。それに気づいた物好きのS看護師が「先生このままでは大変です!救急蘇生を始めましょう!」と奥から重い酸素ボンベを運んできました。もう一人のS看護師は酸素吸入用のチューブを持ってきます。3人目のM看護師が酸素ボンベの栓を開け、「酸素注入2リットル開始!」と宣言しビニール袋の水にブクブクと酸素を注入するとめだかは見る見る元気になりました。

診察室は“めだかのER”と化したしたのですが、私は患者様の場合もこうあって欲しいと思いつつ素早く見事な連携プレイを感心しながら見ていました。そのうちS看護師より私に「水中の酸素が欠乏しないうちに先生は直ちにめだかを自宅に搬送し水槽の中へ入れてください!」との指示が飛びました。

 

 

 

 満員の電車にビニールのめだかを持ち込むのは気が引けるのでタクシーにのり4000円也で自宅にたどり着き豪雨の中、ずぶ濡れになりながら無事に壺にめだかを移し替えたのです。その後、換える水は前日に取り置き、カルキを抜いてやる、壺底の汚物をまめにくみ出す、餌は多からず、少なからずなどの注意を守り、めだかは死ななくなりました。

 

 

 そして先日の朝、水面下に数ミリの無数の動く物を発見しました。一瞬ボウフラかとお思いましたが、だらしの無い立ち泳ぎではなくスイスイと明らかに魚のようです。ついに待望のめだかの子が泳ぎまわっているのを発見したのです。思わず「大変だ~!」と大声を上げてしまいました。隣近所の人は何事かと驚いたことでしょう。感激の一瞬でした。

 

 

 

 

めだか飼育研修生 弘岡泰正

 ある日、出入りの植木屋の爺さんが「置き場に困っているのでこの庭においてはどうか?」と言って直径、深さ50cmもある立派な素焼きの壺を持って来ました。庭隅のハナミズキの下に置くと地中海の島から発掘されたような色のテラコッタのつぼが新緑に映えて中々に美しく、爺さんは「やっぱり見立てどおり!」とタバコをふかしながら得意顔です。一週間ほどして今度は水草と、めだか20匹をビニールの袋にいれてやって来て「この壺には水を張り、水草を浮かべてめだかを飼うのが最も似合う。」と言うのです。

我が家では生き物は家族3人の人類の他はあえてお世話する必要も無い神出鬼没のゴキブリと庭を我が物顔に占拠する藪蚊ぐらいのものです。たかがめだかとは言え生き物を飼育するとなるとそれなりの覚悟が必要です。爺さんは「な~に時々餌をやってほっとけば自然に増えてくるよ。」と簡単に言いますが念のためネットで調べると結構大変そうです。

案の定、翌朝には5匹の死骸が浮いており、出勤前の忙しい時間に蚊に刺されながら毎日水を入れ替えたり、餌をやったりしたのですが1週間もするとめだかは全滅してしまいました。

 私はすっかり意気消沈し、「自分には生き物を飼う資格は無いのか? これからはもうタタミイワシは食えない!」等とわけのわからない事をくちばしり、めだかのいない壺を見つめていたのです…。

 

 

 

 しばらくしてその悲劇的な話しを診療の合間に“めだか好き”そうな?患者さんにしたところ、「悲しそうな先生を見るのは私もつらい」との事で驚く事に翌朝一番で、ビニール袋の中を元気に泳ぐ15匹のめだかを届けてくれました。ところがすぐに洗面器にでも移しておけば良かったのですが忙しさにかまけてそのままにしていると夕方にはビニールの中のめだかは弱り始めました。それに気づいた物好きのS看護師が「先生このままでは大変です!救急蘇生を始めましょう!」と奥から重い酸素ボンベを運んできました。もう一人のS看護師は酸素吸入用のチューブを持ってきます。3人目のM看護師が酸素ボンベの栓を開け、「酸素注入2リットル開始!」と宣言しビニール袋の水にブクブクと酸素を注入するとめだかは見る見る元気になりました。

診察室は“めだかのER”と化したしたのですが、私は患者様の場合もこうあって欲しいと思いつつ素早く見事な連携プレイを感心しながら見ていました。そのうちS看護師より私に「水中の酸素が欠乏しないうちに先生は直ちにめだかを自宅に搬送し水槽の中へ入れてください!」との指示が飛びました。

 

 

 

 満員の電車にビニールのめだかを持ち込むのは気が引けるのでタクシーにのり4000円也で自宅にたどり着き豪雨の中、ずぶ濡れになりながら無事に壺にめだかを移し替えたのです。その後、換える水は前日に取り置き、カルキを抜いてやる、壺底の汚物をまめにくみ出す、餌は多からず、少なからずなどの注意を守り、めだかは死ななくなりました。

 

 

 そして先日の朝、水面下に数ミリの無数の動く物を発見しました。一瞬ボウフラかとお思いましたが、だらしの無い立ち泳ぎではなくスイスイと明らかに魚のようです。ついに待望のめだかの子が泳ぎまわっているのを発見したのです。思わず「大変だ~!」と大声を上げてしまいました。隣近所の人は何事かと驚いたことでしょう。感激の一瞬でした。

 

 

 

 

めだか飼育研修生 弘岡泰正

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