ナチスの健康政策と後期高齢者医療

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 広島で両親が原爆に遭い、胎内被爆の私は根っからの平和主義者で戦争絶対反対ですが、困った事に戦争映画が大好きです。子供の頃は怪力男と美女がでるローマ歴史戦争映画、インデアンとジョンウェインの戦う西部劇、テレビのコンバット等を見ながら悪友達と畑で戦争ごっこに精を出しておりました。戦争映画では極限状態におかれた人間の印象に残る台詞や映像にグッとくる事が度々あり、「史上最大の作戦」ではノルマンデイの海岸防衛線で迫りくる連合軍の艦船を前にドイツ軍の司令官が人生で一番良い事がある時に飲もうと大事にとっておいたお酒を最悪の状況で自嘲気味に飲み干す場面が印象的でした。少し高級なワインを飲む機会があると私はいつもこの場面を思い出し、美酒が自棄酒にならない生活が送れるよう願いながら杯を傾けるのです。またバルジ大作戦という映画にも興奮しました。第二次大戦末期のヨーロッパ戦線でロバート・ショウ扮するドイツ機甲師団司令官が最後の反撃に際して歴戦の戦車兵が皆戦死していまい、急遽集められた少年兵を前にして失望していると、けなげにも少年兵たちがpanzer leadと言う勇壮な軍歌を靴を踏み鳴らしながら歌い始め、司令官も心が動かされ共に合唱しながら出撃してゆく場面がありました。これも私の好きな場面で、落ち込んだ時は思わずそのメロデイーを口ずさんでしまいます。最近のハリウッド映画に比べるとリアルさは劣りますが“血沸き肉踊る”人間くさい昔の西部劇や戦争映画のDVDにどっぷりつかり前期高齢者の余生を楽しみたいと思っていたのです。

 

 

 

 ところが呑気にDVD鑑賞とはいかなくなってきました。此の所、医療情勢が風雲急を告げ、さっぱり要領を得ない特定健診・保健指導でてんてこ舞いしている最中に、悪名高き後期高齢者医療がスタートしたのです。厚労省の「始めに医療費差削減ありき」の冷酷で傲慢な数合わせの本制度は以前より一部の医療関係者から問題にされてきましたが何故かマスコミでも取り上げられる事もなく秘かに悪性腫瘍のように進行していたのです。与党議員のほとんどが内容も良く分らないまま能天気な小泉純一郎に振り回されて本法案が強行採決した事も明らかになり、お粗末な事この上もありません。

 

 

 

 数年前にペンシルベニア州立大学のロバート・プロクター教授が著した「健康帝国ナチス」草思社という非常に興味深い本を読みました。その中でナチスが国を挙げてのがん検診を推進し、肺がん、乳がん、子宮がん、大腸がんの早期発見を目指す集団検診に力を入れていた事を知りました。職場健診ではいち早くアスベストを取り上げ、世界で最初のタバコ撲滅運動を肺がん発生率と対比させ全国的に行った事も大きな驚きでした。ユダヤ人の虐殺や身障者の安楽死、生体実験などおぞましい行為の一方で、ゲルマン民族の健康で優秀な兵士、労働者、母親を育成するために「健康は総てに勝る!」とのスローガンで予防医学を重視した厚生行政が70年も前に行われていたのです。ところで高齢者対策で興味深い記述がありました。ナチス幹部のヘルムート・ハウボルトという人物が「高齢者とは社会に有用でなくなった者」であると定義し理想的なナチス世界においては、国民は出来るだけ長い間懸命に働き、老人は民族共同体に経済的負担をかけないよう早く死ぬ事を良しとし、労働医学の目的は健康に働いて引退後早く死ぬ労働者を作る事であり、引退の年齢と死亡年齢の差を近づけ、理想的にはゼロにすると述べているのです。

 

 

 

 なんとなく今回の後期高齢者政策に非情なナチスの政策がダブって見えるのは私だけでしょうか?

確かに老人医療費の増大は深刻ですが、まず税金の無駄使いを“どげんか”してもらわなければいけません。自衛隊は一台9億円近くもする90式戦車を約300台も保有しているそうですが戦争映画マニアの目からしても他国に攻め込まない限り戦争放棄した憲法下のわが国に戦術的にも戦車が必要とはどうしても思えません。戦後一度足りとも戦車が必要とされる事態が起こり、今後も起こる可能性があるのでしょうか?富士山麓での仮想の戦争ごっこのための費用を現実の危機である老人医療費に回すべきだと思っています。

 

 

 

理事長 弘岡泰正

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