住民健診に思う

 今年の住民健診が終わった。一年に一度だけお会いする受診者の方も多いが、結果報告で「特に問題ありません。」と伝える時、等しく満面の笑みを浮かべ、「おかげさまでこの一年安心して元気に過ごせます。」と言われる。「良かったですね。」と返す私たちにとってもささやかな喜びの時である。ところで住民の高齢化で歯の抜けたように受診されない方が増えつつある。亡くなったり施設に収容されたりした方で、そのお知らせを受ける場合もあるが、「あの方は今年は見えなかったなぁ」となんとなく気になる方も少なくない。

 

 私のクリニックの健診受診者は平均年齢71.2歳の高齢で、女性が男性の倍である。東京の女性は全国で最も肥満頻度が少なく、健康に気をつけている人が多いせいか健診結果の良好な人が多い。ところが昼食にうな丼を食べ、3時にラーメンを食べ、晩御飯はカニ料理をたらふく食べる93歳の平気なおばあさんの血液検査の結果も、不思議なことに完全に○である。この方はC型肝炎があり週に3~4回、北朝鮮に輸出された“生物兵器の材料”とされる例の肝庇護剤を注射しに現れるが、ひょっとするとこの“生物兵器の材料”とやらは強力なアンチエージング物質かも知れない。「あの婆さんはケチだ」とか「あの爺さんはズルイ奴だ」とか老人仲間の辛口コメントをしていたのだが、皆先にあの世に行ってしまい、さすがに少し寂しそうである。人の悪口を周囲を気遣わず大声で言うのも、またアンチエージング療法かもしれない。

 

 話が脱線したが、住民健診が大きく変わろうとしている。厚労省の大号令で40歳~74歳の特定健診、特定保健指導の実施が保険者に義務付けられる事になる。この健診事業の目的は生活習慣病対策を強化し、2015年までに糖尿病等の生活習慣病およびその予備軍を25%減らす事とある。健診、保健指導の実施率やメタボリックシンドロームの該当者の減少率で市町村国保や健保組合等の保険者が評価され、国からの支援金が加算されたり、減らされたりするという大変な制度である。この改革で75歳未満の前期高齢者は恩恵を受けるかもしれないが、後期高齢者(75歳以上)の方々は小泉改革のお土産で、従来のような住民健診が打ち切られて受けられなくなるのである。オバ捨てか?と感じる人もいるかもしれない。必死にリハビリに励む人々に対するリハビリ日数制限問題もある。いったいわが国の福祉行政はどうなったのであろうか。

 

 健診で問題が認められた場合の保健指導は、本来医療機関で医師が中心となって行うべきものであるが、厚労省はこれをアウトソーシングすることを勧めている。最近の新聞の一面にはメタボ商機で保険業界や健康ビジネス業界が活気づいているとの報道である。先日小生はある会で厚労省の元お役人とこの問題で議論する機会があり、下に示す漫画を披露したところ色をなして反論された。お上のすることを信じたいが、漫画のようにならないことを祈る…。

 

 

理事長 弘岡泰正

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