新たな家族

 今年は1月に母を、8月に飼っていた“エビゾウ”を失う寂しい年でしたが暫くの間、毎朝声をかけていた母のガランとした部屋に母の残り香とともに未だ“魂”が存在するかの様な非現実的な思いを抱いていました。そんなある日、TV番組で見た頭に黄色い冠を頂く真っ白い天使のようなオカメインコに魅せられてしまいました。そして主を失った母の部屋でこの鳥を飼う事を密かに決めたのです。ある日曜日の朝、「これから鳥を買いに行くから一緒に来るように。」と唐突な私の申し出に家内は「今夜のおかずは鳥料理?」などとピントはずれの返事です。訳を話すと驚いて「家が糞だらけになる。」だの「誰が世話をするの」だのとブツブツ言いながらもついて来ました。

 

 

 自宅の隣駅に戦後の闇市が原点と言われる自由が丘デパートというマーケットがあります。中を歩くと“三丁目の夕日”の世界にタイムスリップした感覚になり、なにやら昔映画で観たカサブランカのバザールのような雰囲気でもあります。

 

 

 店の商品も人も昭和の香り一杯ですがそのマーケットの奥に鈴木オートならぬ鈴木鳥獣店がありました。ペットショップなどという今時のネーミングでないのが嬉しくなります。トンビやイノシシの子供でも売っていそうな名前ですが、店には親切そうなオバサンが店番をしており可愛いウサギやハムスター、ジュウシマツ、セキセイインコ、子桜インコ。何種類かのオカメインコがいました。その中でお目当ての真っ白なオカメインコの幼鳥と目が合いました。このオカメインコは何故か頭頂部がザビエルのように禿げていましたが可愛い目で「私を連れて行って」と訴えている様に思えました。私は即決でこの生まれて約一ヶ月のオカメを飼う事にしたのです。反対していた家内もすっかり気に入り、中華料理のようでイヤだという私の意見を無視し「ピータン」と名をつけて歓んでいます。

 

 

 それからは店のオバサンに飼い方のイロハを教わり、4冊もインコ飼育法の本を買って猛勉強です。インコは15度以下、30度以上では弱ってしまうとの事で猛暑の今夏は温度調節が大変でした。また朝5時起床で糞の掃除、水替え、おかゆのように湯をそそいだムキエを朝晩与え、約一時間一緒に遊んでやります。あまり水浴びが好きでないようなので霧吹きをかけてやったり、首の回りをなぜてやったりすると気持ち良さそうに目を細めます。ひと遊びした後は鳥かごを食卓の真ん中に置き、ラジオ体操を聞きながら家族水入らずの朝食です。

私はすっかり心を奪われてほとんど「オーム病」状態になってしまいました。

 

 

 家内は「年を取ってからの夫の浮気は大変と聞いているけど人でなくて鳥で良かった。」などとわけのわからない事を言っています。早く話しが出来る様になるといいな。

 

 

 

理事長 弘岡泰正

CONTACT予約・お問い合わせ