看板あれこれ

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 私たちの町内には色々な大看板があります。神社の近くには加賀藩前田家由来の170年の伝統を持つ「日本一高い、日本一うまい」と謳った饅頭屋の大看板がそびえ立っています。「日本一になる理由はなにかあるんでしょうか。2位ではだめなんでしょうか」というような野暮な事を言うと神様のバチがあたります。また一方で太田道灌に団子を供したとの古い暖簾の店の看板も負けてはいません。さらに世界堂なる画材屋さんの大看板も目を奪います。屋上で御苑を眺めながら世界が一堂に会する温暖化の国際会議でもやれば町会長はもはや国際人です。街角の小さな時計屋さんも頑張っています。「新宿を名実ともに背負っている店はうちだ。」と言わんばかりの看板は立派なものです。

 

 

 

 またある料理屋さんの屋上には巨大な“お釜”が鎮座ましましていますが世界の“2丁目”の入り口でこれ以上のアピールはありません。あとは彼の将軍様の銅像サイズのウルトラマンが洋服を着て天を差す看板がキングサイズの洋品店の屋上に立てば決まりです。

 

 

 

 そこで「わが町は看板の宝石箱や~。」と思っていたところ、東京都と新宿区は景観条例なる法律で新宿御苑内から見えるビル屋上の看板が景観を損なうとして撤去するよう求めている事を知りました。あるカツラメーカーの看板も無くなるそうですが少し寂しい気持ちになります。大分髪が薄く後退し、人生に希望も自信も薄れてきた紳士が冬枯れの御苑を散策中に偶然見かけたカツラの宣伝によって人生が変わる事があるかもしれません。また旅行会社の看板をみて御苑から足を伸ばし「そうだ京都に行こう。」さらには「セントラルパークまで行っちゃおう!」というオバサンがいるかもしれず経済効果は少なくありません。

 

 

 

 しかしながら看板が羊頭を掲げ狗肉を売るの類であっては困ります。また、かって昭和天皇が琵琶湖を行幸された折、湖畔に輝く雄琴の“特殊浴場”の看板群をご覧になり、「あの綺麗なネオンは何か?」とお尋ねになった際にご案内役が答えに窮し冷や汗を掻いたという話がありますが、その種の業界の看板は大喪の礼が行われる場所ですからご遠慮願いましょう。欧米の都市は看板が少なくそれなりに落ち着いた雰囲気があり、古い石造りの高さの揃った建物群と、凝ったパブサインや色々なブリキ看板は建物や街通りにしっくりと調和して一体となり風景画家達の創作意欲を掻き立てて来ましたし、私も大好きです。

 

 

 

 しかしながらそれらを無理に日本の風土に押し込むのはいかがでしょうか。欧米には欧米の文化がありアジアにはその特有の文化があります。雑然さはアジアのエネンルギーでもあります。ゴジラに襲われる銀座には森永ミルクキャラメルのどでかいネオン地球儀の看板が必要ですし、ラドンにやられる大阪の道頓堀には江崎グリコの巨大なオッサンランナーが無いとあきまへん。

かってオイルショックの際に節電で銀座のネオンが消えたときには気持ちもしぼみました。“華美にて雑だが卑ではない看板”は日本の、否、新宿の文化です。商売、サービス業の街の新宿が官庁街のような味気ない街並みになるのには賛成できません。

 

 

 

…と色々ごちゃごちゃ書きましたが本音のところ、うちのクリニックにももう少し目立ついい看板が欲しいなあ~。

 

 

 

 

理事長 弘岡泰正

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