真夏の電気医者

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 猛暑が続いています。インフルエンザに罹患した体温なみの気温の毎日にへとへとです。体温調節機能が鈍り、口渇などの脱水症状の自覚に乏しいお年寄りが動けなくなって家族に伴われて外来にやって来ます。昨年はカラカラのヒモノ状態で自宅に倒れているところをヘルパーに発見されて救急搬送され,九死に一生を得た一人住まいのお年寄りがいましたが、御高齢の方には苛酷過ぎる夏です。

 

 

 

 さて先日、20年来の患者さんのY婆さんが外来にやって来ました。有名な戦国武将と同姓同名の御主人をずっと昔に亡くし、大病を患った後も元気に一人暮らしをしています。

15年程前まではゲートボールに夢中で「あんなに楽しいものはない。先生も一緒にどう?」などと誘ってくれていましたが、仲間が次々と天国のゲートをくぐり、最後の一人となってしまってゲームオーバーになりました。そこで新たな楽しみを見つけ、整形外科の診療日には膝に注射の“膝友”とサロン化した待合室でのおしゃべりに花を咲かせています。

 

 

 

 さて本日は整形外科の日でもないし、定期の私の診察日ではありません。

珍しく元気がなく、困り切った顔で診察室に入って来たY婆さんに熱中症にでもやられたかと心配し、「今日はどうしました。大丈夫ですか?」と声をかけたところ、Y婆さんは何やら言い難そうに、「今日は先生の御専門ではないように思うんだけど、ちょっと具合が悪いんで診てもらいたいのよ。」と言ってバックを広げ、何やら探しています。時々腹具合が悪いと訴えるY婆さんの元気のない表情に、私はてっきり血便の付いたトイレットペーパーでも出てくるのかと思い身構えました。

 

 

 

 ところが出てきたのは大分使い古したエアコンのリモコンでした。

若い看護婦さんなら「ウッソー。マジー」と言うところでしたが、後ろについていた、“やや年配”の看護婦さんが、思わず「アッチャー!」と声を上げました。

連日の熱帯夜でさすがのエアコン嫌いのY婆さんもクーラー無では眠られず、久しぶりにリモコンを取り出したのですが、使い方が分からず、うまく作動しなかったようです。

 

 

 

 大型店舗の進出で 町の電気屋さんが消えて久しいのですが、相談する人もなく、困ったY婆さんは私の顔を思い出したという訳です。TVの予約操作もできないリモコン音痴の小生は一瞬固まりましたが、信頼されている?と信じている主治医の威厳を保ちながら「どれどれ、フムフム。」等と古びたリモコンを手に取りながめていますと、後ろからすかさず“やや○○“の看護婦さんが救いの手を差し伸べ、「ここを押せばいいんですよ。」と教えてくれました。

 

 

 

 Y婆さんは大喜びです。「やっぱり先生は頼りになるね~。」とニコニコしながら部屋をでていきました。 

来年からクリニックを“よろずやクリニック”に改名しようかな。

 

 

 

 

 

 

 

理事長 弘岡泰正

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