肩こりのお話

 寒くなると肩の凝り、背中の痛みを訴えて受診する患者さんが多くなります。「単なる肩こりと思っているとあなたは大変なことに!実は恐ろしい内臓の病気が隠れているのかも。」と煽る“健康バラエテエイ番組”が一役かっているかもしれません。病院を受診するほどではないにしても、まわりを見渡すと一日中パソコン業務のOLや重い鞄をぶら下げた営業マンの多くが肩こりに悩まされています。ところで肩こりは日本人にはありふれた症状ですが驚いた事に欧米人ではあまり訴える人がいません。この人種による違いに関して新聞などの健康記事では欧米人の頭部を支える骨格の大きさや筋肉量の多さが尤もらしく解説されています。この件に関して私は以前から欧米人、とりわけラテン系の人々が会話の最中に行う「両手のひらを上に向け、肘を90度にまげて両肩をすぼめるジェスチャー」が自然の内に効果的な“肩こり体操”になっているのではないかと睨んでいます。

 

 

 

 国際会議でわがドジョウ首相が重そうに肩を下げ、原稿にお地蔵さんのような顔を落としたまま演説しているのに対し、サルコジ大統領は10分間の演説中に100回程度あの肩すぼめジェスチャーをしていました。私はこれをスピーチ・エクササイズと命名しました。帰国途中の機内で、わが宰相は疲労困憊の肩を秘書に揉んでもらっているかもしれませんが、サルコジ氏は元気いっぱい肩こり知らずで美人妻の肩をマッサージしている事でしょう。

 

 

 

 ところで肩コリは大変なストレスや気遣いの後にもおこります。以前、世話人をしているあまり人気のない勉強会に人寄せパンダで落語家を呼ぶことになりました。仲間のA先生の患者ということで、昔なつかしいNHKのバラエテイ“お笑い三人組”の金ちゃん事、三遊亭金馬師匠にお願いする事になりました。正直言うと先代の金馬名人に比べ今の金馬さんの話はいまいちで、かつて末広亭の一番前の席に座っていた女房が退屈な話の最中に爆睡状態になり、やりにくそうな師匠が時々こちらをにらみながら扇子の先で目を覚まさせようとコツコツと床を叩いていたのを思い出しました。

 

 

 

 さて世話人仲間のK先生と今回の講演のお礼は5万円程度で行きましょうという事で熨斗袋に容易して、あまり期待せずに最前列の世話人席に二人で座り、はなしを聞き始めたのですが、なんということでしょう。この日の師匠は絶好調で会場はみな大爆笑で、しかも「15分程度で。」とお願いしたのに大サービスで時間延長です。思わずK先生に「この話で5万円は安すぎじゃない。もう一寸色を付けましょう。」とひそひそと耳元で提案しますとK大先生も「そうだよな」という表情を浮かべ、無言でうなずきます。

「ところで先生、手持ちにいくらぐらい持ってる?」とこっそり聞くとテーブルの下でチョキのサインで2万円です。あいにく私が2万円で、計9万円では恰好がつきません。

協賛してもらっていた製薬会社の担当者に眼で合図してきてもらい1万円出してもらい、合わせて10万円の出演料となりました。ついでに新しい熨斗袋をどこかで扱えてくるようヒソヒソ話で頼んだのですが「この時間じゃ無理です。」というつれない返事です。仕方なくふところから用意した袋を取りだし、閉じた糊代をテーブルの下で開ける作業です。師匠にばれないよう、時々顔をあげ、「あはは!」と笑っているふりをしますが気が気でありません。隣のK先生も「そろそろサゲが近づいてきたけどまだ?」と心配そうに小声で聞いてきます。最後の手段で少し唾でしめらせるとやっとの事で熨斗袋が空きました。

 

 

 

 演目終了後、人の苦労も知らない大喝采の中、めでたく金10万円也の御礼をお渡しする事ができました。世話人2人は汗びっしょりで落語を聴くところではありませんでした。

肩の凝った懐かしい思い出です。

 

 

 

 

理事長 弘岡泰正

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