風邪の季節に思うあれこれ

風邪の患者さんで外来が忙しくなってきました。
今年は例年よりも大雪とインフルエンザの流行が早く来たとのニュースが流れています。
「御老人や体力の弱った方がインフルエンザに罹患すると肺炎を併発するので予防しましょう。」と、あまり健康そうでない太鼓腹の釣りバカ浜ちゃんがTVで肺炎ワクチンを受ける様呼びかけていますが浜ちゃん自身が肺炎になってスーさんの所へ行かぬよう祈っています。誰かは知りませんが「昔の人」という偉い人が“風邪は万病の元”と言ったそうですが、これはSTAP細胞の存在よりも明らかな医学的真理です。単なる風邪と思って油断して長引かせると浜ちゃんの言う通り肺炎を合併してあの世行きになったり、何やらこむつかしいEBだのサイトメガロだの怪獣映画の主人公のようなビールスにやられているのかもしれません。というわけで、有名な漢詩「少年易老学難成」に着想を得て私がかって世に問うも何故か埋もれていた流行性感冒警鐘の詩を再掲いたします。

 老人風邪ひき易く、咳治りがたし

風邪の季節には町の薬局では各製薬メーカーの咳や鼻や喉に効くと言われる多くの風邪薬が売られ、町の診療所へは子供から老人まで多くの患者が押し寄せます。マスコミでしばしば持論を展開する大先生が「3種類以上の風邪薬を処方する医者は危険だから受診するな!」とか「風邪は栄養を摂って寝ていたら自然に治るので医者に行く必要はない!」等とご高説を垂れていらっしゃいますが、時に4種類の薬を処方する私などはさしずめ危険な大藪医者という事になります。風邪ぐらいで処方すべきでないと言われる抗生物質を服用してもらい長引いた咳痰などの症状が軽快する場合も少なくありません。一概に風邪を一括りにして実際に患者を見ずして頭でっかちの文献的考察で世論を誘導するのではなく丁寧に診察して個々の症例にあった治療を行う当たり前の医療が必要だと思います。

 

ところで10年ほど前に90歳を超えたお爺さんが都心の住人とは思えない、手ぬぐいの頬かむりで兎の毛皮のちゃんちゃんこを着て外来にやってきました。肥え桶でも担いだ方が似合いそうないでたちです。家族に言われていやいや受診したらしいのですが、少し鼻水をたらし、咳払いをしながらゲホゲホと出て来た痰を飲み込んでいるのを拝見し、「風邪のお薬を出しましょうか?」とお聞きすると、半分以上は聞き取れない元祖新潟弁らしき方言で「うんにゃ、その必要はねえ、オラがガキの頃は風邪ことひくと障子のサンさたまったホコリこと集めて鼻水でかもすて、まあーれい丸薬にいっぺすて飲むと一発で治っただすけ。」「日清戦争の頃は兵隊は風邪ことひぐと歯磨き粉さ飲んで直しただったらー。」等とのたまいました。昔の人が丈夫だったのか、この爺さんが特別だったのか分かりません。世界中の製薬メーカの抗生物質ハンター達がアマゾン奥地の土壌や様々なカビから新しい抗生物質を探そうと競争していますが、障子のサンのホコリも狙い目かもしれません。

 

ところで私のクリニックに生まれてから一度も風邪にかかった事がないという職員がおり、大学病院時代の後輩にも一度も発熱した経験がなく「一度風邪とやらに罹ってみたい。」と豪語していた医者がいました。風邪に関する医療費はインフルエンザを含めると年間5000億円と推定する報告があり、約30兆円の国民総医療費の1.7%と言う事になります。風邪に罹ったことのない人の遺伝子を調べて風邪抵抗遺伝子が検出されて治療に結びつけば風邪に罹る人が無くなり大いなる医療費削減につながるかもしれません。

 

さて話は変わりますが、私の卒業した田舎の小学校、昔分校だった中学校、県立高校の後輩がなんと今年のノーベル賞を取りました。LEDの中村氏です。新聞TV報道での一連の彼の特異なコメントを聞いて、中村タイプの連中が私の田舎には珍しくなかった事を思い出しました。私の田舎は四国の山間の盆地で他の地域との交流は盛んではありません。(1)あまり群れず、(2)自分の思っている事と真逆の事がつい口に出る、(3)周囲の思惑はあまり気にしない。(4)自分の信念を絶対の価値観で突っ走る。(5)あまり名誉欲出世欲はないが内に秘めたそこそこの競争心はある。(6)斜に構えてへそ曲がり。・・・・と言う連中を地元では「ヨモダ」といいます。一般的にヨモダな人は出世しませんし社会的成功者も少ないのですが中村氏は例外という事になります。私も基本的にヨモダの類系に属しますが、未ださっぱり芽が出ずもがいています。これを機に中村氏の爪の垢でも煎じさせてもらい、残りのヨモダ人生を邁進する所存です。

 

 

理事長 弘岡泰正

 

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