アレルギー体質の改善について考える~免疫療法や薬物療法を紹介

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アレルギー体質、という言葉があります。

これは、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を引き起こすメカニズムを体内に持っている、という意味です。

アレルギー体質を持っている人がいるということは、アレルギー体質ではない人がいるということでもあります。

つまり、アレルギー体質を改善できれば、アレルギー症状をなくしたり減らしたりすることができるわけです。

この記事では体質にフォーカスしながら、アレルギー疾患の治療法を紹介していきます。

アレルギー体質の正しい理解

アレルギー反応は、原因物質(以下、アレルゲン)に対する免疫の反応を介する副反応、と定義されます(*1)。副反応とは好ましくない反応のことです。

免疫は体を守るための体の仕組みなので、その反応のほとんどは好ましいものです。くしゃみも鼻水も涙も、体に侵入した害のある異物を体外に出そうとして起きています。

しかし免疫に異常が生じると、害がなく本来は拒絶する必要がない花粉や食物、ほこりなどに対しても、くしゃみ、鼻水、涙などで体外に出そうとしてしまいます。しかもアレルギー症状として出てくるくしゃみ、鼻水、涙などは猛烈で、本人を苦しめ生活の質を著しく低下させます。

つまり、免疫に異常が生じると、免疫が本人を苦しめることになり、このメカニズムを体内に持っている人をアレルギー体質の人というのです。

IgE抗体

アレルギー体質にはいくつか種類があるのですが、最も一般的で患者さんが多いのは即時型アレルギー反応です(*1*2)。そして即時型のアレルギー体質ではIgE抗体という物質が重要な役割を担っています。

あるアレルゲンが体内に侵入してアレルギー反応が起きると、体内にそのアレルゲンとだけ結合するIgE抗体がつくられます。

IgE抗体は血液にのって粘膜の細胞や白血球などにくっついて、次にまた同じアレルゲンが体内に入ってくるのを待ちます。

そして同じアレルゲンが体内に入ってきたら、IgE抗体はそれと結合し、アレルギー反応を引き起こすヒスタミンなどをつくります。それによってアレルギー症状が発生します。

体質改善は簡単ではない

アレルギー体質の改善とは、アレルギー体質ではない状態にすること、といえるでしょう。

つまり、先ほど確認したアレルギー体質のメカニズムを生んでいるものを排除する必要があります。

■アレルギー体質を改善する方法
・アレルゲンに対して免疫を働かせない
・IgE抗体を活動させない

この2つを実施できればアレルギー体質は改善され、アレルギー症状が消える理屈になりますが、いずれも簡単ではありません。

結論を先に紹介すると、すべての患者さんのアレルギー症状を完全に消し去る方法は、現代医学は生み出せていません。

しかし、特定の治療を受けることでアレルギー症状が軽くなる人がいます。

最も体質改善に近いのは舌下免疫療法

薬を飲んで一時的にアレルギー症状を抑えることができても、薬をやめて再発したら、それは「アレルギー体質が改善された」とはいえないでしょう。

「アレルギー体質が改善された」といえるには、治療を受けたら体内のメカニズムが変わり、もうアレルギー反応が起きない状態になる必要があります。

日本アレルギー学会が「唯一の自然経過を改善させ得る治療」「治療終了後も長期にわたって効果が期待できる」と指摘するのがアレルゲン免疫療法であり、その1つが舌下免疫療法です(*1)。

この舌下免疫療法こそが、アレルギー体質の改善に最も近い治療法といえるでしょう。

舌下免疫療法の方法

舌下免疫療法は、花粉やダニといった「患者さんのアレルゲンとほぼ同じ物質」を患者さんに投与することで、そのアレルゲンに対する免疫の働きを抑えます。

この「患者さんのアレルゲンとほぼ同じ物質」が薬になります。

舌下免疫療法で使う薬には液体タイプと錠剤タイプがあり、どちらも舌の下に置き、1、2分そのままの状態を維持し、その後飲み込みます。

この薬を飲むということは、アレルゲンをわざと取り込むことになります。なぜわざわざそのようなことをするのか。

それは、この薬を長期間飲み続けることで体がアレルゲンに慣れ、それによって免疫の過敏で過剰な反応がやむことがあるからです。

比喩的に表現すると、この薬を使って免疫に「このアレルゲンは危険なものではない」「だからアレルギー反応を起こして排除する必要はない」と教え込むことになります。

期待できる効果

舌下免疫療法を受けることで期待できる効果は以下のとおりです(*1)。

■舌下免疫療法で期待できる効果
・鼻炎を改善する
・治癒することがある
・治癒しなくても約7割の患者さんは薬を減らすことができる
・治療を終了しても2年ほど効果が持続することがある
・治療対象のアレルゲン以外のアレルゲンに対するアレルギー反応も抑制できることがある
・喘息が改善することもある

欠点、あるいは限界

「唯一の自然経過を改善させ得る治療」ですが、舌下免疫療法には欠点があります。限界といってもよいでしょう(*3)。

■舌下免疫療法の欠点
・患者さんの2~3割は効果が得られない
・治療期間が3年と長い
・対象となるアレルゲンはスギ花粉とダニのみ(プラス、一部の鼻炎)
・重症の喘息がある人には使えない

そして舌下免疫療法の副作用は次のとおり。

■舌下免疫療法の副作用
・治療の初期に喘息、発疹が起きることがある
・口のなかのかゆみ、腫れ

ただし重篤な副作用は少なく、安全性は高い治療法といえます。

重要な対処療法

舌下免疫療法が完璧でないのであれば、舌下免疫療法が効かない患者さんや、そもそも舌下免疫療法の対象外のアレルゲンで苦しんでいる人はどのような治療を受ければよいのでしょうか。

それは、症状を抑える治療です。いわゆる対処療法です。

「対処療法」と聞くと「完治を期待できず残念」と感じるかもしれませんが、アレルギー症状に対してはそうではありません。

なぜならアレルギー体質を改善することがとても難しいからです。そして、アレルギー症状を抑えることで生活の質が改善するからです。

アレルギー症状への治療では、対処療法はとても重要です。

さまざまな薬

アレルギー症状を抑える薬は複数あります*4)。

抗ヒスタミン薬は、くしゃみや鼻水を引き起こすヒスタミンをブロックします。

マスト細胞安定薬は、免疫に関与するマスト細胞に働きかけて症状を和らげます。

抗ロイコトリエン薬は、鼻づまりの原因になるロイコトリエンをブロックします。

鼻噴霧用ステロイド薬は、花粉症の症状緩和で使われます。

抗IgE抗体は、IgE抗体に結合することでIgE抗体の働きを弱め、アトピー型喘息への効果が期待できます。

医師は患者さんを診療しながら、最もマッチした薬を探していきます。

レーザー治療

鼻の粘膜は「アレルギー症状を引き起こす場所」になりうることから、レーザー治療が行われることがあります。レーザーで鼻の粘膜を焼いて、アレルギー反応が起きないようにします。花粉症が対象になります。

しかしこれも花粉症を完全に治すものではなく、再発するリスクがあります。

まとめに代えて~総合力が必要

「アレルギー体質がある」と聞くと「体質を改善すればアレルギー症状が消える」とイメージしたくなるかもしれませんが、それを実現することは簡単なことではありません。

体質改善に近い効果が得られる舌下免疫療法でも、先ほどみたとおり限界があります。

そのためアレルギー疾患の治療では、体質改善だけに頼るのではなく、総合力で対応していく必要があります。

日本アレルギー学会はアレルギー治療の基本は次の4項目であるとしています(*2)。

■アレルギー治療の基本4項目
・原因となるアレルゲンを回避する
・症状軽減のための薬物療法
・アレルギー性炎症反応の抑制のための長期的な薬物療法
・病気を理解し治療を継続すること

この4つでアレルギーに対抗していきましょう。

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アレルギーの原因は遺伝的なものに限るわけではなく、しっかりと治療すれば改善されるものも多数あります。重症化する前に専門医の治療を受けることをお勧めします。

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