境界型糖尿病とは糖尿病予備軍のこと~そのリスクを解説

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糖尿病は重大な合併症を引き起こしてしまうことがあるので、生活習慣の悪化で発症することは避けたいところです。

しかし、一度身についてしまった生活習慣は改善するのが難しく、改善には強い「きっかけ」が必要になります。

糖尿病予備軍という考え方は、糖尿病を強く警戒し、対策を始めるきっかけになるでしょう。

糖尿病予備軍とは、糖尿病と診断されるほど血糖値が高いわけではないが、正常よりは高くなっていて対策が必要な状態のことです。

そして糖尿病予備軍の1つに、境界型糖尿病があります。

境界型糖尿病は「そろそろ危ないがまだ大丈夫」という状態ではなく、この段階でも合併症のリスクが高まっている点には注意が必要です(*1*2)。

糖尿病の定義と、2つの予備軍との比較

糖尿病予備軍には境界型糖尿病のほかに、正常高値もあります。

糖尿病とこの2つの予備軍には次のような違いがあります(*1*2)。

状態 基準
■糖尿病 ●HbA1c:6.5%以上
●75g経口ブドウ糖負荷試験2時間の血糖値:200 mg/dL以上
●空腹時血糖値:126mg/dL以上
■境界型糖尿病 ●HbA1c:6.0%以上、6.5%未満
●75g経口ブドウ糖負荷試験2時間の血糖値:140mg/dL以上、200 mg/dL未満
●空腹時血糖値:110mg/dL以上、126mg/dL未満
■正常高値 ●空腹時血糖値:100mg/dL以上、110mg/dL未満

 

以下、上記の表を項目ごとに並び替えたもの

■HbA1c

境界型糖尿病 糖尿病
6.0%以上、6.5%未満 6.5%以上

 

■75g経口ブドウ糖負荷試験2時間の血糖値

境界型糖尿病 糖尿病
140mg/dL以上、200 mg/dL未満 200 mg/dL以上

 

■空腹時血糖値

正常高値 境界型糖尿病 糖尿病
100mg/dL以上、110mg/dL未満 110mg/dL以上、126mg/dL未満 126mg/dL以上

 

HbA1cは赤血球のなかに含まれるヘモグロビンの量を示す指標です。ヘモグロビンは血液中のブドウ糖と結合するので、HbA1cの値(%)が大きいほど血液中のブドウ糖の量(血糖値)が多い(高い)と推測できます。

HbA1c6.5%以上は糖尿病と診断される条件の1つですが、これを下回っていてもリスクがあります。6.0%以上だと境界型糖尿病の条件が1つクリアされてしまいます。

75g経口ブドウ糖負荷試験2時間の血糖値は、検査対象者にブドウ糖を75g摂取してもらい2時間後に採血をしてブドウ糖の量を測定します。これが200mg/dL以上だと糖尿病で、140mg/dL以上で境界型糖尿病になります。

空腹時血糖値は、空腹時に採血をして血液のなかのブドウ糖の量を測定したものです。

126 mg/dL以上が糖尿病の条件になりますが、110 mg/dL以上でも境界型糖尿病の条件をクリアしてしまいます。

そして空腹時血糖値が100mg/dL以上で正常高値となって、正常高値となって予備軍入りしてしまいます。

また「予備軍の予備軍」といった状態もあり、それを「将来、糖尿病を発症するリスクが高い」グループといいます。

この条件は以下のとおりです。

■「将来、糖尿病を発症するリスクが高い」グループ
・HbA1c:5.6%以上、6.0%未満
・空腹時血糖値:100mg/dL以上、110mg/dL未満

「将来、糖尿病を発症するリスクが高い」グループに入り、高血圧、脂質異常症、肥満の方は、75g経口ブドウ糖不可試験2時間の血糖値の検査を推奨されます。

予備軍の人の体内では変化が起き始めている

糖尿病は発症しても症状が出ないことがあります。そのため境界型糖尿病や正常高値の予備軍の方々はなおさら症状を感じづらいでしょう。

しかし予備軍の状態ですでに、体内でさまざまな変化が起きています。

インスリンの異常

予備軍に入っていると、すでにインスリンが異常をきたしている可能性があります。インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖を細胞に取り込む手伝いをします。

インスリン異常には2つのタイプがあります。

1つ目のタイプは、インスリンの分泌量が減るものです。血糖値の高い状態が長期化すると、常に大量のインスリンが必要になり膵臓が「疲れて」しまいます。それでインスリンの量が減ってしまうのです。

インスリンの量が減ると、細胞が血液中のブドウ糖を取り込めなくなるので、血糖値が上昇します。

2つ目のインスリン異常は、インスリンの効果が出にくくなる状態です。

インスリンは十分分泌されているのにインスリンがきちんと「働かない」ため、やはり細胞が血液中のブドウ糖を取り込めなくなって血糖値が上昇します。

動脈硬化が始まる

糖尿病はなぜ怖いのか。その答えの1つは、動脈硬化が起きるから、です。動脈硬化が起きると血管がボロボロになり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めてしまいます。

糖尿病が動脈硬化を引き起こすことはよく知られていますが、糖尿病の条件をクリアした時点から動脈硬化が始まるのか、というとそうではありません。

動脈硬化は糖尿病と診断される前から始まっています。つまり境界型糖尿病や正常高値の予備軍の状態から、動脈硬化が進行しているのです。

油断しないため、対策に乗り出すために予備軍で警戒する

糖尿病予備軍という概念は、健康であり続けたいと思っている方や、糖尿病になりたくない方にとってとても重要です。

糖尿病予備軍に入ったら必ず糖尿病に進むわけではなく、この時点で対策を講じれば糖尿病に進行するリスクを減らすことができます*2)。

検査をして「予備軍」とわかれば油断しなくなりますし、「よし対策に乗り出そう」と思うきっかけになるはずです。

予備軍入りしてしまったらやるべきこと

境界型糖尿病や正常高値の域に達してしまったら、次のことを心がけてください。

■糖尿病予備軍入りしてしまった人の対策
・食事は腹八分目
・野菜を多く食べる
・運動を始める
・体重を5~10%減らす
・禁煙

これは糖尿病と診断されても行うことです。

そうであるならば糖尿病予備軍に入ってしまった段階で、これらに取り組んだほうがよいはずです。

まとめ~自分の健康管理に加えて

先ほど紹介した「糖尿病予備軍入りしてしまった人の対策」はもちろん、血糖値の数値が悪化していない人も取り組んだほうがよいものです。

「糖尿病にならないぞ」と思う前に、「糖尿病予備軍に入らないぞ」と思ってみてください。

糖尿病予備軍という概念を、自分の健康管理に取り込んでみてください。

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