慢性胃炎を「我慢できるから」と放置しないで:症状、原因、治療、胃がんとの関係を解説

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胃炎には慢性胃炎と急性胃炎があり、この記事では慢性胃炎について解説します。

「胸がむかつく」「胃が重い」こうした症状は「だけど我慢できる」と思えることからつい放置されがちですが、慢性胃炎の可能性があります。

その慢性胃炎にピロリ菌が関与していたら、胃がんのリスクを高めるので、やはり早いうちに治療に取りかかったほうがよいでしょう。

ピロリ菌と胃がんの関係は、東京大学医学部などが立証しています(*1)。

慢性胃炎の症状

急性胃炎が痛みのない状態から急に痛み出し、ときに強い痛みになるのに対し、慢性胃炎は何となく毎日調子が悪く、我慢しているうちに収まってくることがあります。

慢性胃炎の症状の特徴は次のとおりです。

・胃の不快感
・もたれている感じ
・腹痛(空腹時と食後に多い)
・食欲の低下
・胸やけ
・吐き気

どれも「今すぐ病院にいかなければまずい」と思えるほどの強さがない点が共通しています。それでつい、慢性胃炎は放置されてしまうことが多いのですが、それは危険なことがあります。

慢性胃炎の原因

慢性胃炎の症状が出るのは、胃が炎症を起こしているからです。

胃には、炎症を起こしやすい性質と起こしにくい性質があります。

塩酸が含まれているから炎症は当然?

胃には、pH1.0~1.5という強力な酸性を示す胃液が存在します。胃液の成分は、塩酸とタンパク質分解酵素ペプシン、粘液、水などです。塩酸が入っているので、胃液を採取してビーカーに入れ、そこに鉄片を入れると溶け始めます。

胃のなかにこれだけ強力な液体があるのは、さまざまな食材を消化して殺菌しなければならないからです。

常に胃液にさらされている胃は、いつ炎症を起こしてもおかしくない状態にあるといってよいでしょう。

それでも胃が消化されないのは粘膜のおかげ

胃液があるから、どのような食材でも大抵は消化できます。

では、牛の胃であるホルモンはしっかり消化するのに、なぜ自分の胃は胃液に消化されないのでしょうか。

それは胃の表面が粘膜で覆われているからです。

粘膜は胃液の消化力を消して胃壁を守ります。粘膜はさらに、少々の胃壁の傷なら修復してしまいます。

これが、健康な胃が、炎症を起こさないメカニズムです。

したがって慢性胃炎を含む胃炎は、このメカニズムに支障がでて発症することになります。

ストレス、ピロリ菌、アルコールなど

慢性胃炎の原因は次のとおりです。

・ピロリ菌
・ストレス
・アルコール
・タバコ

このなかで最も注意しなければならないのはピロリ菌で、慢性胃炎の80%の原因になっているという報告もあります。

ピロリ菌は胃がんとも深い関係があるので、後段でさらに詳しく解説します。

慢性胃炎の治療

慢性胃炎の治療には、薬物治療ピロリ菌の除菌生活習慣の改善、の3つがあります。

薬物治療

医師が慢性胃炎と診断すると、患者さんの症状によって次ののいずれかを処方するはずです。

・消化性潰瘍用剤
・酸化マグネシウム(制酸剤)
・酸分泌抑制剤
・粘膜保護剤
・その他

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌の存在が疑われる場合、ピロリ菌を除去する薬を使います。薬はいくつかありますが、代表的なものは次の3つです。

・胃酸を抑える薬
・クラリスロマイシン
・アモキシシリン

この3つの薬を1日2回、7日間飲みます。

この治療で除菌できる確率は70%です。除菌できたかどうかは、薬を飲み終えてから数カ月後に呼気テストを行って調べます。

除菌できなかった場合、もう一度薬を飲みます。これで最終的に95%の人を除菌できます。

生活習慣の改善

アルコールやタバコを飲む人が慢性胃炎を起こしていれば、医師はいずれも控えるように指導するでしょう。

そしてストレスが多い人は、ストレス原因を取り除くようにします。家庭のこと、家族のこと、仕事のこと、お金のこと、友人のことなどがストレッサーになっていれば、環境を変えるよう努めてください。

そして食生活の改善も必要です。

医師は、治療が完了するまで、焼き肉や天ぷら、食物繊維が多いもの、塩分が濃いもの、辛いもの、ブラックコーヒーなどを飲み食いしないよう指導するでしょう。

胃がんとの関係

慢性胃炎と胃がんは、ピロリ菌でつながっています。

その流れは次のとおりです。

・ピロリ菌の感染→慢性胃炎の発症→萎縮性胃炎→腸上皮化成(ちょうじょうひかせい)→がん化→胃がん

ピロリ菌は子供のころに、ピロリ菌に感染した親から感染することが多いとされています。上水道が整備されていなかった昔は、井戸水のなかにピロリ菌が生息していて、それを飲んで感染することが多発していました。

ピロリ菌は、胃の粘膜の作用を弱める毒素を吐き、胃液が胃壁を傷つける切っ掛けをつくります。また、ピロリ菌を攻撃するために白血球が集まり、両者の「対決」が始まりそれが炎症を起こします。

ピロリ菌は急性胃炎や慢性胃炎をも引き起こします。

慢性胃炎を放置しておくと、胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎に進んでしまいます。

萎縮性胃炎が続くと、胃の粘膜が腸の粘膜のようになってしまう腸上皮化成を起こし、その一部ががん化し、胃がんへと成長してしまいます。

例え、慢性胃炎の症状が我慢できる程度であっても、それがピロリ菌によるものであれば除菌したほうがよいのは、胃がん予防につながるからです。

もちろん、除菌によって慢性胃炎による日々の不愉快も解消が期待できます。

まとめ~慣れが最大の敵

かつてモーレツに働くことが美徳とされていたころ、慢性胃炎は企業戦士の勲章のように扱われていました。

しかし現代は、胃が痛くなるまで働くことはむしろ否定的に考えられています。

そして「ピロリ菌→慢性胃炎→胃がん」というルートが解明された今、慢性胃炎は重症化する前に治すべき病気といえます。

痛みに慣れて放置することが慢性胃炎の最大の敵といえます。

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