コロナ後遺症の珍しい症状「めまい」について

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コロナ後遺症の症状の1つに、めまいがあります。

「知らない」という方がいるのは当然で、厚生労働省が紹介するコロナ後遺症の代表的な症状にも、めまいは記載されていません。

そして、コロナ後遺症でなぜめまいが起きるのかは、まだわかっていません。

そのため治療法も確立していません。

「めまい」のコロナ後遺症における位置づけ

厚生労働省が紹介する「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状」(以下、コロナ後遺症)の症状は以下のとおりです(*1)。

■コロナ後遺症の症状
・疲労感・倦怠感
・関節痛
・筋肉痛
・咳
・喀痰
・息切れ
・胸痛
・脱毛
・記憶障害
・集中力低下
・頭痛
・抑うつ
・嗅覚障害
・味覚障害
・動悸
・下痢
・腹痛
・睡眠障害
・筋力低下

このとおり、めまいは含まれていません。

しかし、めまいをマークしている保健機関もあります。

*1 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)について

内科または耳鼻咽喉科での治療がすすめられる

埼玉県は、コロナ後遺症を疑う目安になる「新型コロナ後遺症受診チェックシート」をつくっていて、ここにめまいが登場します(*2)。

同チェック表にはコロナ後遺症が疑われる症状として次の5つのタイプを提示しています。

■コロナ後遺症が疑われる5つのタイプの症状
Aタイプ:息苦しさ、咳、動悸
Bタイプ:だるさ、倦怠感、頭痛、体がフワフワするめまい
Cタイプ:不眠、気分の落ち込み、思考力の低下
Dタイプ:頭髪の脱毛、その他の皮膚症状
Eタイプ:目がグルグル回るめまい、嗅覚障害、味覚障害(口、喉の違和感)

めまいはBタイプとEタイプの2カ所に出てきます。

なぜ2つにわけているのかというと、Bタイプの症状が深刻な場合は内科での治療が推奨され、Eは耳鼻咽喉科での治療が推奨されるからです。

なおこのチェックシートは、A~Eについて支障の度合いを1~5で尋ね、最も気になる症状タイプが3以上であり、それが4週間以上継続しているときに医療機関の受診をすすめています。

*2 埼玉県 新型コロナ後遺症受診チェックシート

めまいの理解

コロナ後遺症にめまいの症状があるのは、コロナ後遺症がめまいを起こすメカニズムを持っているから、と推測できます。

そこでここでは、めまいとはどのような症状で、なぜ起きるのか解説します。

1)ぐるぐる、2)フワフワ、3)クラっ、の3種類ある

一般的なめまいには、目の前がぐるぐる回る回転性めまいと、体がフワフワする浮動性めまいと、立ちくらみのようなクラッとするめまい、の3つのタイプがあります(*3)。

そして最も患者さんの数が多いのが回転性めまいであり、めまいを訴えて受診する人の6割がこのタイプとされています。

*3 兵庫医科大学病院 もっとよく知る!病気ガイド めまい

なぜぐるぐるするのか

回転性めまいは内耳の異常で起きるとされています。

内耳とは耳の奥に位置する器官で、蝸牛(かぎゅう)と前庭系という2つの部位によって構成されています。

蝸牛は音(聞こえ)の振動を信号に変え、聴神経を経由して脳に伝えます。

前庭系には三半規管などで構成され、頭の位置と動きの情報を信号に変え、やはり聴神経を経由して脳に伝えます。

人は内耳の働きによって「聞こえる」と認識したり、平衡感覚を持ったりすることができます。

回転性めまいに影響を与えるのは前庭系です。平衡感覚とは「回っている」「直進している」と認識する能力のことで、したがって前庭系に異常が生じると、本当は体が回っていないのに「回っている」と感じてしまい、それがめまいになります。

コロナ後遺症のめまいのメカニズムは解明されていない

一般的なめまいの多くは回転性めまいで、そのほとんどは内耳が関与しています。

では新型コロナ感染症やコロナ後遺症で内耳に異常が出て、その結果、めまいが出ているのかというと、どうもそうではないようです。

結論としては、コロナ後遺症でめまいが起きるメカニズムはまだ解明されていない、となります。

コロナ後遺症とめまい症状の関係について、埼玉県医師会が発行した「新型コロナ後遺症(罹患後症状)診療の指針のための症例集」が参考になるので紹介します(*4)。

*4 埼玉県医師会 新型コロナ後遺症(罹患後症状) 診療の指針のための症例集(第2版)

めまいの発症頻度は3.9%

同症例集によると、コロナ後遺症でめまいが起きる確率は3.9%でした。

症状の多さトップ10は以下のとおり。

■コロナ後遺症で発症率が高い症状、上位10個
1、咳・痰、23.9%
2、倦怠感、17.1%
3、発熱・頭痛・後頭部違和感、10.4%
4、動悸、息切れ、呼吸困難、8.4%
5、気分の落ち込み、不安感、不眠、7.4%
6、嗅覚障害、6.6%
7、集中力などの低下、5.9%
8、味覚障害、4.6%
9、めまい、ふらつき3.9%
10、咽頭痛、3.7%

めまいは、ふらつきを含めて9位でした。

「ウイルスによる内耳障害とはいえない」

同症例集では、めまいを訴えるコロナ後遺症患者さんを診た医師の所見として、「新型コロナウイルスによる明らかな内耳障害とはいえない」といった見解を紹介しています。

めまいの訴えは10代に多く、頭痛などのそのほかの症状がめまいに関与していると推測しています。

「倦怠感+アルファ」でめまいを訴える人が多い

コロナ後遺症のめまいは、倦怠感+アルファで訴える人が多いと報告されています(*4)。

コロナ後遺症の患者さんの多くは、新型コロナ感染症の療養が終了して社会復帰したときに、いつもと異なる倦怠感を感じて異常を察知する、といいます。

それから倦怠感とあわせて、集中力などの低下、体の痛み、頭痛、息苦しさ、めまい、ふらつきといった症状を訴えます。

*4 埼玉県医師会 新型コロナ後遺症(罹患後症状) 診療の指針のための症例集(第2版)

コロナ後遺症のめまいの治療法は「ない」?

では、コロナ後遺症患者さんがめまいを訴えた場合、どのような治療が行われるのでしょうか。

先ほど紹介した「新型コロナ後遺症(罹患後症状)診療の指針のための症例集」によると、「医師の全般的な知識と経験を基に診療していく」ことしかないようです(*4)。つまり、コロナ後遺症によるめまいに特化した治療法はまだ確立されていないわけです。

*4 埼玉県医師会 新型コロナ後遺症(罹患後症状) 診療の指針のための症例集(第2版)

治療例

めまいに特化した治療法はなくても、それ以外の治療が有効になることがあります。

同症例集で紹介されている、まめいを訴えるコロナ後遺症患者さんへの治療をみてみましょう。

54歳女性は、めまい、浮動感、嗅覚障害、記銘力低下、注意散漫といった症状を訴えて、埼玉医科大学病院の耳鼻咽喉科を受診しました。

診察や検査を行ったところ内耳などに異常がみつからず、経過観察となりました。

49歳女性は、嗅覚障害、味覚障害、めまいを訴えて耳鼻咽喉科クリニックを受診。内視鏡検査や血液検査などを行い、亜鉛が欠乏していることがわかりました。

医師は、当帰芍薬散、ノベルジン、点鼻ステロイドの3つの薬を処方しました。

その結果、めまいは1週間で改善しました。

16歳女性は、新型コロナ感染症を発症してから5カ月間にわたって、嗅覚障害、味覚障害、回転性めまいをわずらい、耳鼻咽喉科クリニックを受診。長時間の歩行ができず、学校に行けない状態でした。

医師は、当帰芍薬散、点鼻ステロイド、グランダキシン細粒、メリスロンなどを処方。

めまいは3週間でほぼ改善しました。

この医師は複数の、めまいをともなうコロナ後遺症患者さんを診察した経験から「コロナ後遺症のめまいは改善しやすく、予後は良好」としています。

このように1人ひとりの患者さんの症状に合わせて、症状を和らげる治療を行います。

まとめ~無理せず治療を

この記事の内容を箇条書きでまとめます。

・めまいはコロナ後遺症の症状としては多くはないが、確実に存在する
・コロナ後遺症のめまいには、体がフワフワするタイプと目がグルグル回るタイプがある
・一般的な回転性めまいは内耳の異常によって生じるが、コロナ後遺症のめまいは一概にそうとはいえない模様
・コロナ後遺症のめまいに特化した治療法はまだないが、治療を受けることで改善を期待できる

新型コロナ感染症を発症し、療養期間が終了したのに疲れがあり、なおかつ、めまいなどの不快な症状があったらコロナ感染症かもしれません。

無理せず、かかりつけ医やお住まいの近くのクリニックにかかってみてください。

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