糖尿病と食事の関係は難しく考えないで「健康食さえ心がければいいんです」

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「糖尿病と食事の関係」と聞くと、少し重い気持ちになりませんか。

食事制限をしなければならないのか、食べたいものを食べられないのか――そんな想像をしてしまうと思います。

しかし、もっと気軽に考えていいんです。

国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターは次のように呼びかけています(*1)。

・糖尿病の患者さんも、そうでない方も、必要なのは適正なエネルギー量で、バランスのよい、規則正しい食事、つまり健康食です

糖尿病患者さんも、糖尿病予備軍の方も、糖尿病になりたくない方も、健康食を食べればいいだけなのです。

しかも健康食の条件は、以下の3つだけです。

1. 適正なエネルギー量
2. バランスが取れている
3. 規則正しく食べる

糖尿病の食事療法は重要だが難しくはない

クリニックなどの医療機関が行う糖尿病の治療には、食事療法があります。医師などが糖尿病患者さんに健康食の指導を行い、糖尿病患者さんが自宅でそれを実行します。

食事療法は糖尿病治療のなかでとても重要な位置を占めますが、やることは健康食を食べることなので難しく考えないでください。

重要だけど難しくない。

これが糖尿病と食事の関係の大原則になります。

まずは超簡単な5つの習慣から始めよう

糖尿病の食事療法も糖尿病予防も、まずは超簡単な5つの習慣から始めましょう(*1)。

■糖尿病食事療法・糖尿病予防の最初の超簡単な5つの習慣
・ゆっくり食べる
・よく噛んで食べる
・朝食、昼食、夕食を規則正しく食べる
・腹八分目で食べるのをやめる
・夜遅くと眠る前は食べない

「食べない」は2つしかなく、残りの3つは「食べる」ルールになっています。

これまでつい食べすぎてしまっていた人も「これならできそうだ」と感じるのではないでしょうか。

脳をコントロールする気持ちで

ゆっくり、よく噛んで食べることで、比較的少ない食事量でも満腹を感じやすくなります。

糖尿病の食事療法でも糖尿病予防でも、食べすぎの人は食事量を減らさないとならないのですが、それをつらく感じる人は少なくありません。つらくなるのは食べても満腹にならないからです。

つまり言い換えれば、少ない食事量でも満腹になれば、つらさが生じないので簡単に食事量を制限できます。

脳の視床下部という部分に摂食中枢と満腹中枢があります。

胃が空っぽになると摂食中枢が働いて食欲がわきます。これが空腹状態です。

そして食事を始めて胃が食べ物で満たされて、血液中のブドウ糖の濃度が高くなると満腹中枢が働いて「満腹だからもう食べたくない」と感じます。

つらさを感じないようにするには、早く「満腹だからもう食べたくない」と感じる必要があります。ところが血液中のブドウ糖の濃度がピークに達するには、食事をしてから45分から1時間ほどかかります。

ゆっくり、よく噛んで食べると食事の時間が長くなるので、ブドウ糖の濃度がピークに達するまでの時間を稼ぐことができ、それでつらさを感じず食事量を減らすことができるわけです。

食べたものを体脂肪にしないために

5つの習慣のうち以下の3つは、食べたものを体脂肪にしないために行ないます。

・朝食、昼食、夕食を規則正しく食べる
・腹八分目で食べるのをやめる
・夜遅くと眠る前は食べない

食べたものはエネルギーになり、その人の活動を支えます。そして、エネルギーが多すぎたり活動が少なすぎたりするとエネルギーが余ってしまい、それが体脂肪になり肥満になり糖尿病リスクを高めたり、糖尿病を悪化させたりします。

朝食、昼食、夕食を大体同じ時間に規則正しく食べることで、活動に必要なエネルギーだけを摂れるようになり、エネルギーが余りにくくなります。

そして、腹八分目くらいで食事をストップすると、これも「活動量=摂取したエネルギー量」になってエネルギーが余らなくなります。

眠っている間はエネルギー消費が減るのでエネルギーをほとんど必要としないので、眠る前は食べないほうがよいのです。

少し高度な3つの習慣

超簡単な5つの食事習慣が身についたら、少し高度な3つの習慣を獲得しましょう。

■糖尿病食事療法・糖尿病予防の次の3つの習慣
・バランスよく食べる
・塩分とコレステロールを控え、食物繊維を増やす
・食事量を減らす

3つとも人によっては難易度が少し増したと感じるかもしれませんが、それでも習慣化してしまえば無意識で進められるものです。

バランスを取るのは炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの5つ

バランスの取れた食事とは、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの5つの要素をまんべんなく食べることです。

厚生労働省は糖尿病と食事の関係について次のように述べています(*2)。

■糖尿病と食事の関係~厚生労働省のアドバイス

炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルが過不足ないように、栄養バランスのよい食事をすることです。
食べてはいけない食品は基本的になく、糖尿病に特によい食品もありません。「糖尿病になってしまったから、おいしいものが食べられない」「お菓子はもう食べられない」ということをよく聞きますが、食べすぎさえしなければ食べられます。

 

「✕食塩とコレステロール」「◎食物繊維」な理由

食塩もコレステロールも食物繊維もバランスよく摂らなければならないのですが、しかし現代人は食塩とコレステロールと摂りすぎる傾向があり、食物繊維を摂らなすぎる傾向があります。

そのため、食塩とコレステロールの摂取を減らし、食物繊維を多く摂るという意識が重要になってくるのです。

食塩とコレステロールを多く摂りすぎると、糖尿病の次のステージである合併症のリスクが高くなってしまいます。

そして食物繊維を多く摂ると、合併症のリスクを低下させます。

食事量を減らそう

「糖尿病を治したい」と強く思っていても、「糖尿病にかからないぞ」と固く決意しても、どうしても食べてしまう人がいます。

そのような人にとって食事量を減らすことは高いハードルに感じるかもしれません。

しかしこれはどうしても越えていただきたいハードルですので、ゆっくり食べたりよく噛んで食べたり、規則正しく食べたりしてチェレンジしてみてください。

ただし「食事量を減らす」ということは「規定の量の食事はしっかり食べられる」という意味でもあります。

「1日の適切なエネルギー量」の分の食事はしっかり食べることができます(*1)。

■1日の適切なエネルギー量の計算式

●1日の適切なエネルギー量(kcal)=目標体重(kg)×エネルギー係数

●目標体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22~25

●エネルギー係数
・普段、座っていることが多い人(軽い労作):25~30(kcal/kg)
・普段、普通に立ったり歩いたりしている人(普通の労作):30~35(kcal/kg)
・普段、力仕事をしている人(重い労作):35~(kcal/kg)

例えば、身長160cmの人で、座って仕事をするデスクワーク(軽い労作)が多い人の1日の適切なエネルギー量は1,400~1,700kcalになります。

これ以上食べないようにしつつ、この量は安心してしっかり食べることができます。

■軽い労作の身長160cmの人の1日の適切なエネルギー量の計算式
「1.6m×1.6m×22」×「エネルギー係数25~30」≒1,400~1,700kcal

まとめ~「制限」と考えず「食べられる」と考えて

言うは易く行うは難し、であり、簡単な方法であっても実行すると大変に感じることもあると思います。

糖尿病治療で食事療法に取り組んでいる人や、糖尿病予防で食生活の改善に努めている人のなかには、ここで紹介した対策に苦労している人もいるでしょう。

食習慣をあらためるには気持ちづくりも大切です。「制限」と考えると苦しいイメージが強くなりますが、「ここまでなら食べられる」と思えるようになれば、1回の食事量を減らしながら次の食事を楽しみにすることができます。

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