下痢が続く原因とは?症状や治療法について解説

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下痢は誰もが経験したことのある病気であるため、症状が軽いと治療せずそのまま放置している人も多いのではないでしょうか。ただの下痢だと思っていても、なかには大きな病気が潜んでいることもあります。

今回は下痢について、症状が続く原因や下痢を引き起こす病気などをわかりやすく解説します。ほかにも医療機関を受診する目安や、下痢をしているときのセルフケアについても解説しますので、ぜひ最後までチェックしてください。

下痢とは?

下痢とは?

下痢とは、便に含まれる水分が異常に増えた状態です。健康な便の水分の割合は60~70%ですが、水分量が80~90%になると泥のような形のない「泥状便」に、水分量が90%を超えると「水様便」になります。泥状便と水様便を一般的には下痢と呼びます。

また、便の形状だけではなく、排便回数も普段と異なります。下痢のときは、泥状便や水様便を1日3回以上くり返し、急激な便意をもよおすことも特徴です。

下痢が続く原因とは?

下痢が続く原因とは?

下痢が続く原因は、急性と慢性の2つに分けられます。それぞれ詳しくみていきましょう。

急性の下痢

急性下痢は、症状が1週間以内でおさまるケースになります。引き起こす原因は次のとおりです。

  • ●ウイルスや細菌などによる感染症
  • ●食中毒
  • ●食べ過ぎ・飲み過ぎ
  • ●食物アレルギー
  • ●薬の副作用

慢性の下痢

慢性下痢は、症状が3週間以上くり返している状態をいいます。症状が続く原因は以下のとおりです。

  • ●過敏性腸症候群(IBS)
  • ●炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
  • ●ストレス

下痢の種類

下痢の種類

下痢は発症するメカニズムから大きく4つに分類されます。

  • ●浸透圧性下痢
  • ●分泌性下痢
  • ●ぜん動運動性下痢
  • ●滲出性下痢

それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

浸透圧性下痢

浸透圧性下痢は、腸で吸収されない浸透圧の高い飲食物が原因です。原因となった飲食物の水分を引き寄せる力が高く、腸で水分が吸収されにくいため、便の水分量が増えすぎて下痢になります。浸透圧性下痢の原因となる食べ物は以下のとおりです。

  • ●キシリトール、ソルビトール、マンニトール、還
  • ●元水あめなど人工甘味料
  • ●一部の果物や豆類
  • ●濃度の高いジュース
  • ●中鎖脂肪酸(MCT)オイル

 

ほかに乳製品に含まれる乳糖を分解できない体質で起こる場合も、浸透圧性下痢に含まれます。

分泌性下痢

分泌性下痢は、腸から便中に水分や塩分が分泌されるため発症します。細菌が生成する毒素やアレルゲンなどが腸の粘膜を刺激するのが主な原因です。

そのほかWDHA症候群やカルチノイドなど腫瘍から分泌されるホルモンの影響で、分泌性下痢を発症することがあります。分泌性下痢では、大量の便が排出される特徴があります。

ぜん動運動性下痢

大腸では本来、ぜん動運動によって消化されたものをゆっくり運びながら水分を吸収し、便を固まらせていきます。しかしぜん動運動性下痢では、何かのきっかけで大腸の運動が過剰になって便の通過するスピードが早まり、水分が吸収されないまま便として排泄されるのです。

ぜん動運動性下痢の原因には、お腹の冷え・過敏性腸症候群・甲状腺機能亢進症などが挙げられます。病気が引き金となり、ぜん動運動をコントロールする自律神経の働きに異常を起こすためと考えられています。

滲出性下痢

滲出性下痢は、潰瘍性大腸炎・クローン病・がんなどが原因で起こります。大腸の粘膜に潰瘍や腫瘍ができて炎症が起こると、水分の吸収能力が低下します。さらに炎症を起こした大腸の粘膜から血液や細胞内の水分が流れ出るため、便の水分量が増えすぎて下痢になるのです。

受診を必要とする下痢の症状

受診を必要とする下痢の症状

以下の症状がみられる場合は緊急性が高いため、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

  • ●今まで経験したことがないほどの激しい下痢(1日10回以上)
  • ●高熱や脱水で意識がぼんやりしている
  • ●激しい腹痛で立つのも座るのもつらい
  • ●水分がまったくとれず、脱水症状(尿の量が減る・
  • ●尿の色が濃い・口の中の強い乾燥)がみられる
  • ●下痢のほかに発熱や嘔吐もある
  • ●便に血液や粘膜が混ざっている
  • ●便の色が赤・黒・緑・白など普段と色が異なる
  • ●激しい腹痛をくり返している
  • ●同じものを食べた人に同じ症状が出ている
  • ●時間が経つほど症状が悪化している

下痢を引き起こす病気

下痢を引き起こす病気

下痢はなんらかの病気が原因で発症することがあります。下痢を引き起こす主な病気について詳しくみていきましょう。

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎は、細菌やウイルスが体のなかに入って増えてしまうことで発症し、激しい下痢や嘔吐をくり返す病気です。原因となるものには、大腸菌O-157、ロタウイルス、ノロウイルスなどがあります。

細菌やウイルスのついた手で口まわりを触ったり、汚染された食品をとったりしたことが感染の引き金になります。感染性胃腸炎では、下痢止めや吐き気止めを用いると、細菌が作る毒素やウイルスが体のなかに長時間とどまり、かえって重症化する可能性があるため要注意です。

ストレス

ストレスは、排便をコントロールする自律神経の働きを乱して下痢を引き起こす原因です。自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、交感神経は大腸のぜん動運動を抑えて、副交感神経はぜん動運動を活発にします。

健全なときは、2つの神経がうまくバランスをとってぜん動運動をコントロールしています。ストレスがかかると交感神経が過剰に刺激されることで、副交感神経の働きが抑えられてしまい、ぜん動運動が乱れて下痢になるのです。

過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS)は、検査で異常が見つからないにもかかわらず、下痢や便秘の症状が続いている病気です。なかにはお腹にガスが発生する腹部膨満感の症状がみられる人もいます。

ストレスや生活習慣の乱れが症状悪化を引き起こすことはわかっていますが、発症の原因ははっきりと解明されていません。過敏性腸症候群は「下痢型」「便秘型」「交代型」の3つの種類があり、交代型では下痢と便秘をくり返します。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

炎症性腸疾患は、腸管が炎症を起こして、慢性的に下痢・血便・腹痛の症状があらわれる病気です。代表的なものは潰瘍性大腸炎やクローン病があり、国の難病に指定されています。

潰瘍性大腸炎やクローン病では、症状が良くなったり悪くなったりをくり返す特徴があります。近年は患者数が増加傾向にあり、発症のピークは10代後半〜30代です。

大腸がん

大腸がんは、早期に自覚症状があまりみられませんが、進行すると下痢・便秘・血便・便が細くなるといった症状があらわれます。食生活の欧米化によって、大腸がんの患者数は年々増加しています。大腸がんの早期発見には、便潜血検査や大腸内視鏡検査など、定期的に検査を受けることが大切です。

慢性膵炎

慢性膵炎は、早期には左のわき腹から背中にかけての痛みを生じますが、症状が進行すると下痢や体重減少が起こります。膵臓で分泌される消化酵素が減るため、脂肪分の消化がうまくできなくなり、液状の白い便(脂肪便)がみられるようになります。

下痢が続くときのセルフケア

下痢が続くときのセルフケア

下痢が続くときのセルフケアで、水分補給や食事など注意する点ついて確認しましょう。

下痢のセルフケアの基本:水分補給と安静

症状があるときは無理やり出しきろうとせず、体を温めて安静に過ごすことが基本です。下痢によって体の水分や電解質が失われている可能性が高いため、水分補給を欠かさないようにしましょう。

水分補給には、経口補水液・スポーツドリンク・リンゴジュース・味噌汁・野菜スープをおすすめします。胃腸に刺激を与えるため、牛乳・乳酸菌飲料・柑橘系ジュース・カフェインを含む飲み物は控えてください。

下痢のときの食事

下痢のほかに吐き気や嘔吐がともなうときは、こまめな水分補給をおこない、無理に食事をとらなくても構いません。吐き気や嘔吐がおさまってから、少しずつ食事をとるようにしましょう。症状があるときの食事で気を付けることは以下の2つです。

消化のよい食材・調理方法を選ぶ

下痢をしているときは、消化しやすいように食材や調理方法の選び方を工夫しましょう。食材は細かく刻んだものをやわらかくなるまで煮込み、できるだけ温かいものを食べることをおすすめします。

下痢時にとるタンパク質は、鶏のささみ・白身魚・卵・納豆が消化によく栄養価も高いです。主食のご飯やうどんは消化しやすいように、やわらかく調理したものがよいでしょう。きのこ類やごぼうのような不溶性の食物繊維が多い食材、油分の多い食材は、消化に時間がかかり腸に負担をかけてしまうため、症状のあるうちは控えてください。

胃酸の分泌を促す食材は控える

香辛料・アルコール・カフェインを含んだ飲料・柑橘系の果物のような刺激の強い食材は、胃酸の分泌を促して胃腸に負担がかかります。下痢をしているときは、刺激の強い食材を控えるようにしましょう。

下痢の検査方法

下痢の検査方法

検査前に問診をおこない、発症の時期・便の状態・心当たり・服用中の薬・下痢以外の症状などを確認します。急性の下痢の場合は、感染性胃腸炎であることがほとんどです。

問診によって、ノロウイルスやロタウイルスの可能性があるときは、便検査をおこないます。また医療機関の受診日から2~3週間以内に抗生物質の服用歴があれば、偽膜性腸炎の可能性があるため、原因菌が作り出す毒素を便から調べます。

慢性の下痢の場合は、血液検査や腹部超音波検査をおこない、疾患の有無やお腹まわりの状態を確認することが必要です。さらに詳しい検査が必要と判断された場合は、大腸内視鏡検査をおこない、大腸のなかを直接確認します。大腸内視鏡検査のときに病変が見つかれば、必要に応じて組織を採取して病理検査をすることもあります。

下痢の薬物治療

下痢の薬物治療

下痢が続くときに医療機関でおこなう治療について解説します。

下痢止め薬の使い方

下痢止め薬は、原因によって使用することがあります。原因が食べ過ぎ・飲み過ぎであると明らかになっている場合は、下痢が続いてどうしてもつらいときだけ下痢止めを処方されることがあります。下痢止め薬の副作用で便秘が起こりやすいため、症状が落ち着いたら下痢止め薬の服用は中止しましょう。

原因が感染性胃腸炎である場合、下痢止め薬は処方されません。感染性胃腸炎で下痢止めを使用すると、細菌が作り出した毒素やウイルスが排泄されず、体のなかに長時間とどまります。そのため症状が悪化したり、長引いたりする危険性があるのです。下痢止め薬は市販薬にもありますが、原因がわからないときはむやみに服用するのを控えましょう。

急性の下痢

急性の下痢では、あらわれている症状に応じた治療をおこないます。食べ過ぎや飲み過ぎの場合は、食事はおかゆ・やわらかくしたうどんなどを少量にして胃腸を休め、脱水症状を防ぐために水分補給はこまめにおこないます。回復するまでの間に、消化酵素製剤や整腸剤が使われることがあります。

感染性胃腸炎のときは、整腸剤や抗菌剤を投与し、数日かけて症状改善を図ります。脱水症状がみられる場合は点滴治療をおこない、水分と電解質を補います。

慢性の下痢

慢性の下痢では、下痢を引き起こす原因となった病気の治療を優先しておこないます。過敏性腸症候群のときに使う薬剤は、消化管運動調整薬・高分子複合体・セロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬などがあります。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の主な治療薬は、5-ASA製剤・ステロイド剤・免疫抑制剤です。

まとめ

下痢は水分量が異常に増えた便を1日3回以上くり返す状態

下痢とは、含まれる水分量が異常に増えた便を1日3回以上くり返す状態です。下痢を引き起こす病気は、感染性胃腸炎・過敏性腸症候群・炎症性腸疾患など多岐にわたります。

下痢症状のほかに、以下の症状をともなうときは緊急性が高いため、早急に医療機関を受診してください。

  • ●高熱や脱水で意識がぼんやりしている
  • ●激しい腹痛があり、動くことができない
  • ●水分を自力でとれず、尿がほとんど出ない

 

下痢の治療では、むやみに下痢止め薬は使いません。急性の下痢であれば整腸剤を使用し、慢性の下痢であれば下痢を引き起こした原因疾患の治療をおこないます。

下痢が続くときのセルフケアは、胃腸を休めてこまめな水分補給をおこなうことが基本です。食事は胃腸の負担を軽くするため、やわらかくて消化のよい食材を、できるだけ温かく調理するようにしましょう。下痢が続いてお困りの際に、今回の記事を参考にしていただければ幸いです。

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