企業の義務「雇入れ健診」とは~働く人に、いつまでにどこで受けさせるのか

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企業などの事業者は労働者に健康診断(以下、健診)を実施しなければなりません。これは法律で定められた義務です。

この記事では、企業に課せられた健診のうち、雇入時の健診(以下、雇入れ健診)について解説します。企業は労働者を雇うときに、その労働者に健診を実施しなければなりません。

では労働者に、いつまでに、どこで受けさせなければならないのでしょうか。また、雇入れ健診の対象となる労働者は誰なのでしょうか。

ひとつずつ解説します。

結論:常時使用労働者を入社前後3カ月以内に医療機関で受けさせる

雇入れ健診の意義や位置づけを解説する前に、1)いつまでに実施しなければならないのか、2)どこで受診させるのか、3)誰が対象になるのか、について紹介します(*1)。

1)いつまでに実施しなければならないのか
労働者を雇入れるとき

2)どこで受診させるのか
健診を行っている医療機関

3)誰が対象になるのか
常時使用する労働者

厚生労働省はこれしか示していません。これでは企業の健診担当者は困ってしまうと思うので、目安を紹介します。

■実施時期の目安
入社前後3カ月以内

■対象労働者の目安(いずれも満たす者)
・契約期間の定めがない労働者(いわゆる正社員)、または契約期間が1年以上の労働者、または契約更新などで1年以上使用される労働者
・1週間の労働時間が同種業務に従事する通常の労働者の3/4以上

受診場所は明確なので問題ないでしょう。

実施時期は雇入れる前だけでなく、雇入れ後でも問題ありませんが、3カ月以内に実施しましょう。

また、正社員以外でも、正社員の労働時間の3/4以上働いてもらう予定があり、なおかつ1年以上在籍する予定のパートやアルバイトも雇入れ健診を実施しなければなりません。

*1 厚生労働省 健康診断Q&A

雇入れ健診の位置づけと意義

雇入れ健診の実施は企業に義務化されているわけですが、義務化されているということは法律があるということになります。

雇入れ健診を規定している法律は、労働安全衛生法です(*2)。同法は一般健診を規定していて、雇入れ健診はその1つになります。

*2 厚生労働省 労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~

一般健診のなかの雇入れ健診

労働安全衛生法が規定する一般健診の種類と概要は以下のとおり。

■一般健診の種類とその概要

健診の種類 対象となる労働者 実施時期
雇入れ健診 常時使用する労働者 雇入れるとき
定期健診 常時使用する労働者 1年以内ごとに1回
特定業務従事者の健診 対象業務に常時従事する労働者 ●対象業務に配置されたとき
●6カ月以内ごとに1回
海外派遣労働者の健診 海外に6カ月以上派遣する労働者 ●海外に6カ月以上派遣するとき
●帰国後、国内業務に就かせるとき
給食従業員の検便 事業に関係する食堂または炊事場で給食の業務に従事する労働者 ●雇入れるとき
●配置されるとき

適正配置するために実施するのであって採用の判断材料にしてはいけない

雇入れ健診の目的は、労働者を働かせるときに適正な職場に配置するためです。また、入社後の健康管理にも、雇入れ健診の結果を活用することができます。

ここで注意しなければならないのは、雇入れ健診の結果を採用の判断材料にしてはいけない、ということです。厚生労働省は「採用選考時に同規則を根拠として採用可否決定のための健康診断を実施することは適切さを欠くもの」としています(*3)。

つまり、企業の採用担当者が求職者の健診結果をみて、それだけを理由に不採用にすることは不適切な行為になります。

同省は「応募者の適性と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、結果として就職差別につながるおそれがある」とまでいっています。

*3 労働省職業安定局 採用選考時の健康診断について

費用は事業者が負担する

雇入れ健診は公的医療保険の対象外であり、いわゆる「保険がきかない検査」になります。したがって雇入れ健診の費用はその全額を誰かが負担しなければなりませんが、負担するのは企業などの事業者です。

企業は労働者に雇入れ健診の費用を請求したり負担させたりしてはいけません(*4)。

*4 厚生労働省 健康診断の費用は労働者と使用者のどちらが負担するものなのでしょうか?

雇入れ健診の検査項目

雇入れ健診で行う検査などは以下のとおりで、これは社員たちが年1回受ける定期健診の内容とほぼ同じです(*2)。

■雇入れ健診の検査項目
1、既往歴及び業務歴の調査
2、自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3、身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4、胸部エックス線検査
5、血圧の測定
6、貧血検査(血色素量及び赤血球数)
7、肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
8、血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9、血糖検査
10、尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11、心電図検査

*2 厚生労働省 労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~

企業の担当者は「雇入れ健診の実績のある医療機関」に発注しましょう

雇入れ健診ではやらなければならない検査が法律で決まっています。そのため企業の健診担当者は、実績がある医療機関に雇入れ健診を依頼したほうがよいでしょう。

雇入れ健診の実績がある医療機関に発注すれば、企業の健診担当者は対象労働者、または対象求職者に「この医療機関で健診を受けてください」と指示するだけで済みます。

5年保存も報告義務はない

企業は雇入れ健診の結果について、健診個人票を作成して5年間保存しなければなりません。ただし、労働基準監督署への報告は必要がありません。ちなみに定期健診は労働基準監督署に報告する義務があります(*2)。

*2 厚生労働省 労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~

まとめ~ヒロオカクリニックには雇入れ健診の実績があります

記事の内容を箇条書きでまとめます。

・雇入れ健診を実施する目安は入社前後3カ月以内
・雇入れ健診を実施する場所は健診を行っている医療機関
・雇入れ健診の対象者は常時使用する労働者で、正社員だけでなく、パートやアルバイトも働き方によって対象になりうる
・雇入れ健診の目的は適正配置と健康管理であり、採用の判断材料にしてはならない
・雇入れ健診の実施は企業などの事業者に義務づけられているので、費用は事業者が負担しなければならない(労働者に負担させてはいけない)

ヒロオカクリニックでも雇入れ健診を行っております。お気軽にご相談ください。

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