熱中症はまれに後遺症を残す:脳の病気に進むことも

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熱中症が、「体温が急上昇して極度の体調不良に陥り、治療を受けて回復して終わり」という病気ではないことは、だいぶ知られてきました。

年によっては全国で千人以上、熱中症で亡くなる年もあります(*1)。

そして熱中症は、まれではありますが、重い後遺症を残すことがあります。脳を障害し、高次脳機能障害やパーキンソン症候群を引き起こすことも報告されています(*2)。

後遺症の種類

後遺症とは、原因となる病気が治っているのに障害が残ってしまい、悪い症状が固定してしまう現象のことです。

熱中症の後遺症には次のようなものがあります(*3)。

・中枢神経障害
・高次脳機能障害
・嚥下障害
・小脳失調
・失語
・歩行障害
・パーキンソン症候群

昭和大学医学部の研究によると、Ⅲ度の重い熱中症を発症した1,441人の患者さんのうち、22人(1.5%)に中枢神経障害の後遺症が残りました。

中枢神経障害の患者さんと一部重複しますが、高次脳機能障害は15人(1.0%)、嚥下障害は6人(0.4%)、小脳失調2人(0.1%)、失語1人(0.07%)、植物状態が1人でした。

1,441人のうち、死亡せず後遺症も残らなかった人は286人で、わずか19.8%でしかありません。

中枢神経とは脳と脊髄のことで、ここが障害されるとさまざまな「できないこと」が起きます。

高次脳機能障害とは、脳が損傷されることで、注意力、記憶力、感情を制御する能力などに問題が生じます。

嚥下障害とは、食べ物が飲み込めなくなる症状です。食べ物の飲み込み(嚥下)は、複数の器官が連係して成立します。その動作を命じる脳が障害されるので、連係作業ができなくなります。脳卒中を起こしても嚥下障害が起きるのですが、それと同じことが熱中症の後遺症で起きているわけです。

小脳は、筋肉を制御して体を正しい位置に置いたり、運動をつかさどったりします。そのため小脳失調を引き起こすと、体がふらついたり、歩行障害が起きたり、舌がもつれたりします。

失語とは、会話や文章が理解できなくなる障害です。

パーキンソン症候群も、脳の血管に異常が起きて発症します。症状には、歩行姿勢が不安定になる、よく転倒する、筋肉のこわばりなどがあります。

Ⅲ度はとても危険

熱中症の症状の重さは、Ⅰ度(軽度)、Ⅱ度(中等度)、Ⅲ度(重度)の3段階で評価します。それぞれの症状は次のとおりです。

Ⅰ度の特徴的な症状

・生あくび・めまい・筋肉痛・こむらがえり・立ちくらみ・大量の発汗

Ⅱ度の特徴的な症状

・頭痛・集中力の低下・判断力の低下・嘔吐・虚脱感・だるさ

Ⅲ度の特徴的な症状

・意識障害・全身のけいれん・体温上昇

後遺症を残しやすいのは、やはりⅢ度です。

そして、中枢神経障害の後遺症を残してしまう人は、病院に運ばれたとき重度の意識障害や高体温を起こしていて、体温を下げるのに長い時間を要するという特徴があります。

Ⅲ度に進ませない

熱中症が一気にⅢ度に行くことはまれで、普通はⅠ度からⅡ度へ、そしてⅢ度へと段階的に進みます。

ただ、Ⅰ度の段階では、症状は生あくびやめまい、筋肉痛などなので、この状態で救急車を呼ぶことはためらわれてしまいます。

しかしⅠ度でも次の処置はすぐに行ってください。これがⅢ度の予防策です。

■「熱中症かも」と思ったときの処置

涼しい場所に移動する

可能であればクーラーがきいている室内に移動してください。屋外の場合は日陰に避難してください。

体温を下げる

服を脱ぎ、風を受けたり、濡れたタオルで体をまいたりしてください。

氷があるとよいのですが、ない場合は冷えたジュースのペットボトルでもよいので、1)足のつけ根、2)首のつけ根、3)わきの下に接触させてください。この3カ所の皮膚の下には太い血管が流れているので、氷や冷たいペットボトルを押しつけると、冷やされた血液が全身を巡って体温を下げることができます。

水分と塩分の補給

冷たい水を飲んでください。大量に汗をかいているときは、スポーツドリンクを飲んでください。経口補水液も有効です。

もしそれらの飲み物がなければ、水1リットルに食塩1、2gを溶かして飲んでください。汗をかくと体内の塩分が体外に出てしまうからです。塩分は水分を保持する作用があるので、体内から大量の塩分が失われると、水分も失われてしまいます。

「危ない」と思ったら「かも」の段階でも救急車を呼んで

「危ない」と思ったり、「危ないかも」と思ったりしたら救急車を呼んでください。

意識障害や全身けいれんはもちろんですが、吐き気や頭痛の段階で医療機関にかかってもまったくおかしくありません。

医療機関で早めに治療を受ければ、後遺症を残さず回復できるかもしれないからです。

また炎天下に意識が不確かな人やけいれんしている人をみかけたら、周囲の人と連係して、119番通報したり、その人に声掛けしたりしてください。

こういうときは迷わず119番

神奈川県の川崎市消防局は、熱中症で救急搬送したケースを紹介しています。「こういうときは迷わず119番」の事例として覚えておいてください。

・80代男性が、7月中旬の午後1時ごろ、気温34度のとき、買い物の帰り道でふらついて倒れました。症状は、発汗、意識障害で名前がいえず、体温40度でした。

・60代男性、8月下旬の午後5時ごろ、気温33度のとき、屋外駐車場の誘導員の仕事をしていました。体調不良を自覚して植え込みで座りこんでから、倒れてけいれんを起こしました。その他の症状は、発汗、意識障害によるぼんやりした様子、血圧が86/56まで低下、などです。

まとめ~まれなケースであってもいつも注意を

熱中症には、すべての人がいつも警戒しなければならないのですが、夏場は気持ちが高まるので、つい活動的になってしまいます。

そこで、「熱中症は恐い病気」「まれに後遺症が残るほど重症化する」と覚えておいてください。人は、恐いものには注意深くなることができます。

「暑いな」に加えて「あれ?」と思ったときは、すでに熱中症が始まっているかもしれないので予防策を取ってください。後遺症を起こさないようにするには、重症化を遠ざけることです。

新宿ヒロオカクリニックでは、「かかりつけ医」として、院長の田原稔医師(内科・循環器内科)と常勤の宮本哲也医師(総合内科・消化器内科)を中心に、循環器内科専門医、消化器内科専門医、整形外科専門医、糖尿病専門医、腎臓専門医等の多くの専門医が協力して各種診察・治療を行っておりますので、熱中症の場合は内科でご受診ください。詳細はこちら

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