生活習慣病の種類をすべて明示することが難しい理由:病気を広くとらえる意義とは

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生活習慣病と聞いて、何の病気を思い出すでしょうか。

糖尿病でしょうか、脳梗塞でしょうか、がんでしょうか。

確かにそれらはすべて生活習慣病です。

ただ、生活習慣病をすべて述べよといわれたら、その答えを出すことは医師でも難しいかもしれません。

それは「この病気は生活習慣病ではない」ということが難しいからです。

生活習慣病は、とても広い概念の言葉で、病気を大きくとらえることに意義があります。

生活習慣病の定義

生活習慣病の種類をすべて明示しにくいのは、定義があいまいだからです。

厚生労働省は生活習慣病を次のように定義しています(*1)。

・生活習慣が原因で起こる疾患の総称。重篤な疾患の要因となる。

疾患とは病気のことで、重篤とは重いという意味です。

すなわち生活習慣病は、原因が生活習慣で、重い病気の原因になりうるもの、ということになります。

「これとこれが生活習慣病である」といっているわけではありませんし、生活習慣という言葉はとてもあいまいです。

厚生労働省は別の定義も用意しています(*2)。

・食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣がその発症や進行に関与する疾患群

問題となる生活習慣として、食、運動、休養、タバコ、酒を挙げていますが「など」を加えて含みを持たせています。

日本生活習慣病予防協会は、次のように定義しています(*3)。

・健康的とはいえない生活習慣が関係している病気
・生活習慣次第で発病を防ぐことができる病気
・病源体や有害物質や遺伝的要素によって引き起こされるわけではない病気

問題となる生活習慣のことを、健康的とはいえない生活習慣としています。

また、生活習慣を変えることで発病を防ぐことができることを示唆していて、ポジティブな印象を受けます。

病原体と有害物質と遺伝的要素によって引き起こされる病気は生活習慣病ではない、ともいっています。

「これは生活習慣病」といえる病気

冒頭で、「この病気は生活習慣病ではない」ということは難しい、と紹介しましたが、「この病気は生活習慣病である」という病気は比較的容易に紹介することができます。厚生労働省は以下の病気は生活習慣病に該当するとしています(*1)。

<生活習慣病に該当する病気>
・脳血管疾患
・心疾患
・動脈硬化症
・糖尿病
・高血圧症
・脂質異常症
・がん
・慢性閉塞性肺疾患

厚生労働省はさらに、問題となる生活習慣ごとに生活習慣病を分類しているので、それも紹介します(*2)。

問題となる生活習慣 それによって発症する生活習慣病
食習慣 インスリン非依存糖尿病、肥満、高脂血症(家族性のものを除く)、高尿酸血症、循環器病(先天性のものを除く)、大腸がん(家族性のものを除く)、歯周病など
運動習慣 インスリン非依存糖尿病、肥満、高脂血症(家族性のものを除く)、高血圧症など
喫煙 肺扁平上皮がん、循環器病(先天性のものを除く)、慢性気管支炎、肺気腫、歯周病など
飲酒 アルコール性肝疾患など

上記の表の内容は、1996年に厚生労働省が作成した「生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について(意見具申)」に記載されているものです(*4)。

このころ、成人病という名称を生活習慣病にあらためるようになりました。

歯の病気である歯周病や、病気とはいえない肥満も含まれています。

また、がん全体ではなく、大腸がんと肺扁平上皮がんに限定しているのは、時代背景も影響していると思われます。

このことから、生活習慣病は、特定の複数の病気の総称というわけではなく、病気に関する広い概念であることがわかります。

では、生活習慣病を「病気に関する広い概念」としてとらえることに、どのような意味があるのでしょうか。

アルツハイマー病は生活習慣病対策のターゲットになるがコロナはならない

生活習慣病は、「この病気とこの病気のこと」といったように特定の病気のことを指している言葉ではなく、病気に関する広い概念であることがわかりました。

ではなぜ医療界において、生活習慣病という広い概念が必要になるのでしょうか。

それは、生活習慣病を狭い範囲で考えないほうがよいからです。

先ほど、複数の生活習慣病の定義を紹介しましたが、その1つに次のものがありました。

・病源体や有害物質や遺伝的要素によって引き起こされるわけではない病気

この定義からすると、例えば新型コロナウイルス感染症は、コロナウイルスという病源体によって引き起こされるのであって、不健康な生活習慣によって発症するわけではないので生活習慣病ではありません。

したがって、新型コロナウイルス感染症は生活習慣病対策のターゲットになりません。

では、アルツハイマー病はどうでしょうか。

アルツハイマー病は、脳の神経細胞が減って認知症が進行する病気です。その原因は、異常なタンパク質が脳にたまって神経細胞が障害されること、とされています(*5)。

この定義からすると、アルツハイマー病は生活習慣病ではないような感じがしますが、日本生活習慣病予防協会は、アルツハイマー病も警戒すべき病気に含めています(*6)。

生活習慣病の予防について考える日本生活習慣病予防協会が、アルツハイマー病を予防のターゲットにしているのは、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満がリスク要因になっているからです。

病気には、病気そのものが恐い病気と、恐い病気を引き起こす病気があります。

糖尿病も高血圧症も、初期段階では多くの人が無症状です。そのため、糖尿病や高血圧症と診断されても、恐怖におののくといった人は少ないはずです。

しかし、糖尿病も高血圧症も、恐い病気につながるので強く警戒して治療に取りかかる必要があります。

人々に「恐い病気につながるので強く警戒して治療に取りかかる必要がある」と認識してもらうことこそ、生活習慣病を定める意義といえます。

そして、糖尿病も高血圧症も、アルツハイマー病のリスク要因になります。

そのため、次のようにいうことができます。

・アルツハイマー病の発症リスクを減らすため、生活習慣を見直しましょう、生活習慣病を発症させないようにしましょう

アルツハイマー病は脳内のタンパク質に関連する病気ですが、生活習慣病に関連する病気でもある、といえます。

生活習慣病の概念を広く取っていることで、このようにいうことができるわけです。

アルツハイマー病の発症リスクを減らすため生活習慣を見直しましょう、ということができれば、人々は「アルツハイマー病を発症して認知症になるのは嫌だから、生活習慣を見直そう」と考えることができます。

生活習慣病の広い概念は、健康意識を高めるために有効であるといえます。

まとめ~本気で取り組まない理由はない

生活習慣病を知ると、あれもこれもそれも生活習慣病になるのか、と気がつくはずです。

そこに気がつくと、生活習慣をあらためるモチベーションが高まるのではないでしょうか。

生活習慣をあらためることは簡単ではありません。ダイエットは大変な作業ですし、禁煙するのはつらいことです。どうしても大量の酒を飲んでしまう人もいるでしょう。

しかし、生活習慣の改善のメリットが膨大であることがわかれば「ならばやってみよう」となります。

がんリスク心筋梗塞リスクアルツハイマー病リスクも、生活習慣病予防に取り組むことで減らすことができるので、やらない理由はないといえます。

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