骨粗鬆症の予防や症状・治療法など分かりやすく解説

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骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防法として、食事や運動を気にしている人は多いでしょう。骨粗鬆症になり腰や足の骨を骨折すると、動けなくなり次第に寝たきりの状態になることが少なくありません。骨粗鬆症では、予防が非常に重要になります。

ここでは、骨粗鬆症の予防や症状・治療法などをわかりやすく解説しています。骨粗鬆症を予防する食べ物や骨粗鬆症の予防に効果的な運動も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは、骨密度や骨質の低下によって骨が弱くなり、骨折しやすくなった状態です。スカスカでしなやかさのない骨は、少しぶつけただけでも骨折してしまいます。高齢の女性に多い病気ですが、若年層の人も今のうちから注意しておかなければなりません。

若いうちから過度なダイエットをしていると、カルシウムなどの栄養素が不足して骨がもろくなります。また、運動不足が続くと、骨を強くする機会が損なわれます。その結果、将来骨粗鬆症になるリスクが高くなるのです。

骨粗鬆症になりやすい人の特徴

骨粗鬆症になりやすい人の特徴には、高齢者、女性などがあげられますが、それ以外にも生活習慣が大きく影響しています。いつも同じものばかりを食べていたり、食事量を減らしたりして栄養バランスが乱れると、骨の形成において大切なカルシウムやビタミンDが不足します。バランスのとれた食事をしていない人は、骨粗鬆症になりやすいでしょう。

運動不足も骨粗鬆症において大きなリスク因子です。ジョギングやウォーキングなどの負荷のかかる運動をしないと、骨に刺激が伝わらないので骨が強くなりません。

また、過去に骨折したことのある人は、再び骨折する可能性が高いといわれています。転んで少しぶつけただけで骨折することもあるので、普段から運動して筋力をつけ、転びにくい歩き方を心がけましょう。

骨粗鬆症の分類

骨粗鬆症は、原因によって大きく2つに分類されます。

  • ●原発性骨粗鬆症
  • ●続発性骨粗鬆症

 

原発性骨粗鬆症

原発性骨粗鬆症とは、加齢や閉経、妊娠によって引き起こされる骨粗鬆症です。加齢や閉経が骨粗鬆症の原因となることは多くの人が知っているかもしれませんが、妊娠が骨粗鬆症のきっかけになるとはあまり聞いたことがないでしょう。

女性の場合、産婦人科で「妊娠後骨粗鬆症」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。妊娠中から授乳期には、たくさんのカルシウムが赤ちゃんの骨の形成のために使われます。

さらに授乳期には、ホルモンの影響で骨が破壊されやすくなり、骨を新しくつくるスピードが追い付かなくなります。そのため、妊娠後期や授乳期に一時的に骨粗鬆症になることがあるのです。

続発性骨粗鬆症

続発性骨粗鬆症は、病気や薬が原因で引き起こされる骨粗鬆症になります。ホルモンを分泌する内分泌器官の病気や糖尿病などの生活習慣病も、続発性骨粗鬆症の一因です。

続発性骨粗鬆症の中でも、特に注意したいのがステロイドの連用による骨粗鬆症です。病気の治療のために服用しているステロイドが原因で骨折するということも少なくありません。医師の診察を受ける時には、病歴だけでなく、過去や現在に服用している薬の情報もしっかり伝えるようにしましょう。

骨粗鬆症の原因

骨粗鬆症の原因

骨粗鬆症の原因について解説します。

加齢

年齢を重ねると、腸管からのカルシウムの吸収低下や、腎臓からのカルシウムの排出増加が起こります。骨は破壊され(骨吸収)またつくられる(骨形成)を常に繰り返しており、それを骨代謝といいます。加齢によってカルシウムが不足すると、骨代謝のバランスが崩れ新しい骨をつくれなくなります。

閉経

閉経によるエストロゲン(女性ホルモン)の低下も骨粗鬆症の原因の1つです。エストロゲンの分泌が低下すると、骨を破壊する細胞が活性化されて、骨密度が急激に低下します。

喫煙

たばこを吸うと、カルシウムの吸収が悪くなります。女性では、エストロゲンの働きを弱める作用があり、骨密度が低下して骨粗鬆症になりやすくなります。

運動不足

骨を強くするには、骨への適度な刺激が必要です。運動不足だと骨に負荷がかからないため、カルシウムがうまく骨に蓄積されずに骨密度が低下して、骨粗鬆症につながります。

飲酒

お酒自体が、直接骨粗鬆症につながることはありません。ただし、お酒の利尿作用でカルシウムが排出され、カルシウムが不足しやすくなります。

お酒と一緒に食事をとりすぎて血糖値が上がり糖尿病になる可能性もあります。そのため、飲酒は骨粗鬆症の2次的なリスク因子といえるでしょう。

ステロイドの長期服用

ステロイドは、骨粗鬆症に大きな影響を及ぼします。骨自体に作用して、骨形成を抑え骨吸収が進みます。

また、全身にも作用して、カルシウムの利用効率の低下やエストロゲンなどのホルモン分泌の低下が引き起こされます。骨代謝がうまく回らなくなり、骨粗鬆症につながります。

病気の影響

ホルモンを分泌する内分泌器官の病気や関節リウマチ、糖尿病なのどの生活習慣病は、骨粗鬆症を引き起こす原因になります。

骨粗鬆症の症状

骨粗鬆症の症状

骨粗鬆症は自分では気づきにくい病気です。具体的にどのような症状が出るのか解説します。

背中や腰が曲がる

骨粗鬆症で骨が弱くなっていると、背中の骨が押しつぶされたように骨折する(圧迫骨折)ことがあります。年のせいで背中や腰が曲がってきたと思っていたら、実は圧迫骨折だったということも少なくありません。

身長が縮む

以前と比べて身長が縮んでいる場合も、圧迫骨折の可能性があります。じっとしていると痛みを感じなくても、寝返りを打ったり体を動かしたりしたときに痛みを感じやすいのが特徴です。歩けるから骨折ではないと思い込まずに、医療機関で医師の診察を受けましょう。

骨折しやすい

手をついただけで手首を骨折するなど、少し力がかかっただけで骨折しやすくなります。特に、背中の骨、手首の骨、太ももの付け根の骨の骨折が多い傾向にあります。

骨粗鬆症の検査

骨粗鬆症の検査

骨粗鬆症の検査では、骨密度を測定します。主な骨密度の測定方法を紹介します。

検査方法 特徴
DEXA法

DEXA法

2種類のX線を照射して測定します。被ばく量が少なく、数分間という短い時間で精度の高い測定ができます。背骨や太もものつけ根、前腕などの骨密度を測定します。
MD法

MD法

X線を照射して手の骨密度を測定します。DEXA法とは異なり、一般的なレントゲン装置で検査できる簡便な検査になります。
超音波法

超音波法

かかとの骨に超音波をあてて、骨密度を測定します。X線を使わないので、妊娠中でも安心して測定できます。

骨粗鬆症のリスクのある人を見つけ出す(スクリーニング)ために使用します。

骨粗鬆症の治療法

骨粗鬆症の治療法

骨粗鬆症の治療は、大きく2つに分かれています。

  • ●自分でできる運動と食事療法
  • ●医師の診察を受けて処方される薬による治療

ここでは特に薬による治療について詳しく解説していきます。

食事と運動

骨粗鬆症と診断されたら、まずは食事と運動の習慣を見直さなければなりません。カルシウムやビタミンDを多く含んだ、バランスのとれた食事を心がけましょう。体を動かせるならば、転ばないように注意しながら、痛みのない範囲で運動をしましょう。

薬による治療

骨粗鬆症の薬は、大きく4種類に分類されています。

  • ●骨を破壊する働き(骨吸収)を抑える薬
  • ●骨をつくる働き(骨形成)を促す薬
  • ●骨吸収を抑え、骨形成を促す両方の作用を持つ薬
  • ●骨吸収と骨形成のバランスを整える薬

 

骨を破壊する働き(骨吸収)を抑える薬

ビスホスホネート 【内服薬・注射薬】

骨粗鬆症治療の中心になる薬です。内服薬の場合、毎日/週1回/月1回タイプがあります。

起床時に飲み、服用後は30分横にならない・水以外の飲食を避ける・他の薬を飲むのも避けるなど、多くの注意点があります。注射薬には、年1回/月1回タイプがあります。

女性ホルモン【内服薬・貼付剤】

女性ホルモン(エストロゲン)を補います。血栓ができやすいという副作用があります。

SERM【内服薬】

Selective Estrogen Receptor Modulator(選択的エストロゲン受容体調整薬)の略称。骨の中では、エストロゲンの働きを促す作用を持っています。血栓ができやすいという副作用があります。

抗RANKL阻害剤 【注射薬】

半年に1回注射します。血液中のカルシウム濃度が低下しやすいので、血液検査で確認しながら治療します。

イプリフラボン【内服薬】

作用は穏やかで、骨の量を増やす作用があります。

 

骨をつくる働き(骨形成)を促す薬

副甲状腺ホルモン剤【注射薬】

骨をつくる働きをもつ骨芽細胞の働きを良くして、骨形成を促します。病院に行って注射するタイプと、簡単なキットを用いて自分で注射するタイプがあります。

 

骨吸収を抑え、骨形成を促す両方の作用を持つ薬

抗スクレロスチン抗体薬 【注射薬】

両方の作用を併せ持つため「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」の患者へ使用することとされています。1ヵ月に1回、12ヵ月注射します。

 

骨吸収と骨形成のバランスを整える薬

活性型ビタミンD3薬【内服薬】

ビタミンDを補って、小腸からのカルシウムの吸収を促します。

ビタミンK2薬【内服薬】

ビタミンKを補います。

カルシウム薬【内服薬】

カルシウムを補います。

骨粗鬆症の予防法

骨粗鬆症の予防法

骨粗鬆症の予防は、以下の3つが重要です。

  • ●バランスのとれた食事
  • ●適度な運動
  • ●骨密度の測定

 

それぞれについて解説していきます。

バランスのとれた食事

まずは食事量の確保が重要です。ダイエットによって過度に食事量を制限するのは避けましょう。また、しっかり量を食べていても、毎日同じものばかり食べていては栄養が偏ります。予防のために積極的に取り入れたい栄養素についてみていきましょう。

カルシウムは不足しがち

2019年の厚生労働省による調査では、20歳以上のカルシウム摂取量の平均は男性503mg、女性494mgでした。2020年版の厚生労働省による日本人の摂取推奨量の発表では、18歳以上のカルシウムの摂取推奨量は男性700から800mg、女性650mg前後に設定されています。全体的に、カルシウムは不足しがちであることがわかります。

厚生労働省:「令和元年国民健康・栄養調査報告
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020 年版)

【カルシウムを多く含む食材】
牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、小魚、大豆製品、小松菜などの野菜、海藻

ビタミンDと日光浴

ビタミンDは食事から摂取できますが、実は皮膚に日光があたると私たちの体の中でもつくられます。体内のビタミンDの量を増やすには、適度な日光浴が重要です。

ビタミンDが十分にあると、腸からカルシウムの吸収が促され、骨粗鬆症の予防につながります。季節や住んでいる地域にもよりますが、夏場は木陰で10分程度、冬場は30から60分程度を目安に日光浴を心がけましょう。

【ビタミンDを多く含む食材】
鮭・いわしなどの魚、しいたけなどのきのこ

ビタミンKも忘れずに

ビタミンKは、カルシウムの骨への沈着を促します。カルシウムやビタミンDと並んで、骨粗鬆症の予防において重要な栄養素です。

【ビタミンKを多く含む食材】
鶏肉、納豆、ほうれん草・小松菜・春菊などの野菜

サプリメントも上手に取り入れよう

不足しがちな栄養素は、サプリメントで上手に取り入れましょう。カルシウムやビタミンDを強化して骨を強くする効果が期待できるサプリメントも販売されています。他に飲んでいる薬がある場合は、重複していたりや効果に影響が出たりする可能性があるため、購入する前に相談してみましょう。

適度な運動

健康管理のために、積極的に運動しましょう。生活習慣病も骨粗鬆症のリスク因子の一つです。よく食べて運動すると、代謝もあがり健康維持につながります。

ここでは、骨を強くする運動と、高齢者でも無理なく続けられるおすすめの運動を紹介します。

骨を強くする運動

骨に刺激が伝わると骨が強くなるので、垂直方向に負荷のかかる運動がおすすめです。ジョギングやウォーキングからはじめてみましょう。

アンクルウェイトという足に巻き付けるタイプの重りがあります。そこまで重くなく、気軽に装着できるので、余裕が出てきたら装着してウォーキングしてみましょう。より足に負荷かがかかり、骨が鍛えられます。

筋肉トレーニングもおすすめです。ウォーキングでは足の骨だけに刺激が伝わりますが、筋肉トレーニングは上半身の骨にも刺激が伝わります。ウォーキングに加えて、少しずつ取り入れてみましょう。

高齢者におすすめの運動

高齢者でも無理なく続けられて、骨粗鬆症の予防に効果的な運動があります。長時間のウォーキングが難しい場合や、筋力が衰えていて転びやすい場合でも取り組みやすい運動になっています。

  • ●開眼片脚立ち体操

開眼片脚立ち体操

片足で1分間ずつを交互に3セット程度、できれば1日に3回おこないましょう。片足で立つことで、両足で立ったときの倍の負荷が片足にかかり、効率よく足の骨を強化してくれます。家の中でも、少しのスペースがあればできるので、転ばないように注意しながら始めてみましょう。

  • ●かかと落とし運動

かかと落とし運動

立ったままつま先立ちになった後、かかとを落とす運動です。簡単な方法ですが、足の骨に刺激が伝わります。

立ってつま先立ちになれない場合は、座っておこなっても問題ありません。立っておこなう場合と比べて刺激は少ないですが、無理なく続けることが大切です。

骨密度の測定

定期的に骨密度の測定おこないましょう。4ヵ月に1度の間隔であれば、骨密度の測定に対して保険が適用されるので、自己負担を抑えられます。

骨密度は20歳前後でピークを迎え、加齢に伴って低下します。特に閉経を迎えると急激に骨密度が低下することもあり注意が必要です。検診において、骨密度の測定も併せて希望される方は、当院にご相談ください。

まとめ

骨密度が平均よりも低い場合でも予防できる

骨粗鬆症は高齢者がかかる病気というイメージを持っている人が多いですが、 妊娠・出産による体の変化やステロイドの連用、過度なダイエットによる栄養不足などで、若い人でも発症することがあります。

骨密度が平均よりも低い場合でも、食事や運動などの生活習慣を改善することで予防できるため、「まだ必要ない」と思い込まずに、40代になったら骨粗鬆症の検査を受けることをおすすめします。健康寿命を延ばすために、自分の骨粗鬆症のリスクを知り、早いうちから予防に取り組みましょう。

ヒロオカクリニックでは、DEXA法による骨密度計測や、骨粗鬆症の診断・治療おこなっております。ご希望の方は、整形外科をご予約の上ご相談ください。

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