PCR検査にまつわる2つの基準「行政検査」と「陽性か陰性か」

INDEX

 

新型コロナウイルスに感染しているかどうかを確認するPCR検査には、重要な2つの基準があります。

行政検査の基準と、陽性か陰性かを判定する基準です。

 

行政検査とは、都道府県知事の権限で、感染者や感染疑いがある人にPCR検査を受けさせる検査のことです。

陽性または陰性を決める判定は、実は国によって異なります。日本で陽性と判定される数値が、外国では陰性と判定されることもあります。

2つの基準を知ることで、PCR検査への理解がより深まるはずです。

 

 

行政検査はこのように行われる

 

感染症法は行政検査について次のように規定しています(*1*2)。

 

 

感染症法第15条

 

●第1項

 

都道府県知事は、感染症の発生を予防し、または感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするため必要があると認めるときは、当該職員に1類感染症、2類感染症、3類感染症、4類感染症、5類感染症、もしくは新型インフルエンザ等感染症の患者、疑似症患者、もしくは無症状病原体保有者、新感染症の所見がある者、または感染症を人に感染させるおそれがある動物、もしくはその死体の所有者、もしくは管理者その他の関係者に質問させ、または必要な調査をさせることができる。

 

(第2項省略)

 

●第3項

 

都道府県知事は、必要があると認めるときは、第1項の規定による必要な調査として当該職員に次の各号に掲げる者に対し当該各号に定める検体、もしくは感染症の病原体を提出し、もしくは当該職員による当該検体の採取に応じるべきことを求めさせ、または第1号から第3号までに掲げる者の保護者に対し当該各号に定める検体を提出し、もしくは当該各号に掲げる者に当該職員による当該検体の採取に応じさせるべきことを求めさせることができる。

 

●第4項

都道府県知事は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定により提出を受けた検体、もしくは感染症の病原体又は当該職員が採取した検体について検査を実施しなければならない。

 

 

コロナは「指定感染症」に指定されているので、1、2、3類感染症に対する措置と同じ措置ができます。

この2つの条文は法律用語が多いので、平易な言葉を使って要約してみます。

 

・都道府県知事は、コロナに感染した患者、似た症状の患者、無症状だがコロナを保有している人、他人に感染させるおそれがある人に対して、調査を行うことができる

・都道府県知事は、コロナに感染した患者、似た症状の患者、無症状だがコロナを保有している人、他人に感染させるおそれがある人に対して、検体の提出を求めることができる

・都道府県知事は、提出を受けた検体を検査しなければならない

 

検体とは、PCR検査を受ける人の唾液や鼻の奥の粘膜のことです。検査とはコロナの場合、PCR検査のことです。

行政検査としてのPCR検査は、保健所または行政機関が委託した医療機関で行います。

 

 

行政検査の対象になる人の基準

 

行政検査(PCR検査)の対象になる人の基準は次のとおりです(*3)。

 

・37.5°C以上の発熱かつ呼吸器症状があり、入院が必要になる肺炎が疑われる人。特に高齢者と基礎疾患がある人は積極的に考慮する

・症状や新型コロナウイルス感染症患者の接触歴の有無など医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症と疑う人

・新型コロナウイルス感染症以外の一般的な呼吸器感染症の病原体検査で陽性となった人で、その治療の反応が乏しく症状が悪化した場合に、医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症と疑う人

 

 

PCR検査の基準 国によって陽性になったり陰性になったりする理由

 

PCR検査の結果が同じでも、国によって陽性になったり陰性になったりするのは、国際基準がないからです*4)。もちろん、明らかに陽性だったり、明らかに陰性だったりした場合は、どの国も陽性または陰性と判定されます。国によって変わるのは、ボーダーライン上の検査結果です。

 

PCR検査では、コロナの遺伝子を構成するRNAをチェックします。検体(採取した唾液や粘膜)のなかにコロナのRNAがあれば陽性と判定し、なければ陰性と判定します。

ただ、コロナのRNAを確認できてもその個数が極めて少なければ、陰性と判定します。そのため、何個を「極めて少ない」とするかで、陰性の基準が変わってしまいます。これがボーダーラインになります。

 

コロナのRNAは小さすぎるので、実際の検査では個数は数えません。そこでRNAの数を「増幅サイクル数」に置き換えます。

 

増幅サイクルとは、コロナのRNAを増やす作業のことです。

PCR検査では検体内にコロナがあれば、そのRNAを確実に捕まえなければならないので、検体のなかのRNAを増やす処置を施します。

1回で増えなければ、2回増幅させます。それでもRNAを確認できなければ、3回目に取り掛かります。

 

日本では、国立感染症研究所がPCR検査マニュアルで基準を定めていて、40回(40増幅サイクル数)以内でコロナのRNAが検出されれば、陽性と判定します。

そして41回以上増やしてようやくコロナのRNAが検出されても、それはコロナのRNAが「極めて少ない」と認定できるので、陰性と判定します。

 

台湾は陽性と陰性をわける増幅サイクル数を35回としています。台湾のほうが陽性と判定する基準が緩いといえます。日本で陽性と判定された人が台湾方式を受けると、陰性と判定されることがある、というわけです。

中国は37回で、日本と台湾の間になっています。

 

 

なぜPCR検査の判定基準が国によってバラバラになっているのか

 

基準が国によってバラバラになるのは、国際基準がないことに加えて、国によってコロナ政策が異なるからです。

 

基準を、陽性を出しやすい値にすると、感染者対策を厳しくできるので、コロナの封じ込めに寄与しますが、本当は感染していないのに陽性と誤判定するリスクが高くなります。偽陽性の人に迷惑がかかるだけでなく、対策コストも増えます。

 

一方、基準を、陰性を出しやすい値にすると、偽陽性の人は減りますが、偽陰性の人が増えてしまいます。偽陰性とは、本当は感染しているのに陰性と誤判定することです。偽陰性の人が安心して普段の生活を送ってしまうと、感染が広がってしまいます。

 

これだけ聞くと、陽性が出やすい基準のほうが「よりまし」な印象を受けるかもしれませんが、もう1つ問題があります。

イギリスのオックスフォード大学によると、PCR検査で、死んだコロナのRNAを検出してしまうことがあります。つまり、陽性が出やすい基準にすると、ますます死んだコロナのRNAによって偽陽性者が増えてしまいます。

 

いくら感染者対策を厳しくできたとしても、偽陽性者が社会の許容範囲を超えて増えてしまうと、国民がPCR検査を信用しなくなります。陽性判定が出ても「どうせ偽陽性に違いない」と思われてしまっては、PCR検査を実施する意義が薄れてしまいます。

 

 

まとめ~基準で回っている

 

行政検査としてのPCR検査を実施する基準と、陽性と陰性をわける基準の2つの基準を紹介しました。

基準はもちろん、医学的な見地から決まるわけですが、社会的な制約によって多少ずれることがあります。社会的な制約とは、コストや財政や手間などのことです。

 

「もし」PCR検査が、コストも手間もかからなければ、全国民が受診したほうがよいでしょう。そうすれば、隔離すべき人を明確に判定できるので、感染対策はスムーズかつ効率的に進むからです。

しかし実際は、PCR検査は2万円ほどのコストがかかります。これを1億2千万人の国民全員に受けさせると2兆4千億円かかりますし、PCR検査だけで医療機関がパンクしてしまいます。

したがって、基準を設けて社会を回すことは、コロナ禍という有事では特に大切になります。

 

 

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新型コロナウイルスに感染しているかどうかを確認するPCR検査には、重要な2つの基準があります。
行政検査の基準と、陽性か陰性かを判定する基準です。

行政検査とは、都道府県知事の権限で、感染者や感染疑いがある人にPCR検査を受けさせる検査のことです。
陽性または陰性を決める判定は、実は国によって異なります。日本で陽性と判定される数値が、外国では陰性と判定されることもあります。

2つの基準を知ることで、PCR検査への理解がより深まるはずです。

行政検査はこのように行われる

感染症法は行政検査について次のように規定しています(*1*2)。

感染症法第15条

●第1項

都道府県知事は、感染症の発生を予防し、または感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするため必要があると認めるときは、当該職員に1類感染症、2類感染症、3類感染症、4類感染症、5類感染症、もしくは新型インフルエンザ等感染症の患者、疑似症患者、もしくは無症状病原体保有者、新感染症の所見がある者、または感染症を人に感染させるおそれがある動物、もしくはその死体の所有者、もしくは管理者その他の関係者に質問させ、または必要な調査をさせることができる。

(第2項省略)

●第3項

都道府県知事は、必要があると認めるときは、第1項の規定による必要な調査として当該職員に次の各号に掲げる者に対し当該各号に定める検体、もしくは感染症の病原体を提出し、もしくは当該職員による当該検体の採取に応じるべきことを求めさせ、または第1号から第3号までに掲げる者の保護者に対し当該各号に定める検体を提出し、もしくは当該各号に掲げる者に当該職員による当該検体の採取に応じさせるべきことを求めさせることができる。

●第4項

都道府県知事は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定により提出を受けた検体、もしくは感染症の病原体又は当該職員が採取した検体について検査を実施しなければならない。

コロナは「指定感染症」に指定されているので、1、2、3類感染症に対する措置と同じ措置ができます。
この2つの条文は法律用語が多いので、平易な言葉を使って要約してみます。

・都道府県知事は、コロナに感染した患者、似た症状の患者、無症状だがコロナを保有している人、他人に感染させるおそれがある人に対して、調査を行うことができる
・都道府県知事は、コロナに感染した患者、似た症状の患者、無症状だがコロナを保有している人、他人に感染させるおそれがある人に対して、検体の提出を求めることができる
・都道府県知事は、提出を受けた検体を検査しなければならない

検体とは、PCR検査を受ける人の唾液や鼻の奥の粘膜のことです。検査とはコロナの場合、PCR検査のことです。
行政検査としてのPCR検査は、保健所または行政機関が委託した医療機関で行います。

行政検査の対象になる人の基準

行政検査(PCR検査)の対象になる人の基準は次のとおりです(*3)。

・37.5°C以上の発熱かつ呼吸器症状があり、入院が必要になる肺炎が疑われる人。特に高齢者と基礎疾患がある人は積極的に考慮する
・症状や新型コロナウイルス感染症患者の接触歴の有無など医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症と疑う人
・新型コロナウイルス感染症以外の一般的な呼吸器感染症の病原体検査で陽性となった人で、その治療の反応が乏しく症状が悪化した場合に、医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症と疑う人

PCR検査の基準 国によって陽性になったり陰性になったりする理由

PCR検査の結果が同じでも、国によって陽性になったり陰性になったりするのは、国際基準がないからです*4)。もちろん、明らかに陽性だったり、明らかに陰性だったりした場合は、どの国も陽性または陰性と判定されます。国によって変わるのは、ボーダーライン上の検査結果です。

PCR検査では、コロナの遺伝子を構成するRNAをチェックします。検体(採取した唾液や粘膜)のなかにコロナのRNAがあれば陽性と判定し、なければ陰性と判定します。
ただ、コロナのRNAを確認できてもその個数が極めて少なければ、陰性と判定します。そのため、何個を「極めて少ない」とするかで、陰性の基準が変わってしまいます。これがボーダーラインになります。

コロナのRNAは小さすぎるので、実際の検査では個数は数えません。そこでRNAの数を「増幅サイクル数」に置き換えます。
増幅サイクルとは、コロナのRNAを増やす作業のことです。PCR検査では検体内にコロナがあれば、そのRNAを確実に捕まえなければならないので、検体のなかのRNAを増やす処置を施します。1回で増えなければ、2回増幅させます。それでもRNAを確認できなければ、3回目に取り掛かります。

日本では、国立感染症研究所がPCR検査マニュアルで基準を定めていて、40回(40増幅サイクル数)以内でコロナのRNAが検出されれば、陽性と判定します。そして41回以上増やしてようやくコロナのRNAが検出されても、それはコロナのRNAが「極めて少ない」と認定できるので、陰性と判定します。
台湾は陽性と陰性をわける増幅サイクル数を35回としています。台湾のほうが陽性と判定する基準が緩いといえます。日本で陽性と判定された人が台湾方式を受けると、陰性と判定されることがある、というわけです。
中国は37回で、日本と台湾の間になっています。

なぜPCR検査の判定基準が国によってバラバラになっているのか

基準が国によってバラバラになるのは、国際基準がないことに加えて、国によってコロナ政策が異なるからです。

基準を、陽性を出しやすい値にすると、感染者対策を厳しくできるので、コロナの封じ込めに寄与しますが、本当は感染していないのに陽性と誤判定するリスクが高くなります。偽陽性の人に迷惑がかかるだけでなく、対策コストも増えます。
一方、基準を、陰性を出しやすい値にすると、偽陽性の人は減りますが、偽陰性の人が増えてしまいます。偽陰性とは、本当は感染しているのに陰性と誤判定することです。偽陰性の人が安心して普段の生活を送ってしまうと、感染が広がってしまいます。

これだけ聞くと、陽性が出やすい基準のほうが「よりまし」な印象を受けるかもしれませんが、もう1つ問題があります。
イギリスのオックスフォード大学によると、PCR検査で、死んだコロナのRNAを検出してしまうことがあります。つまり、陽性が出やすい基準にすると、ますます死んだコロナのRNAによって偽陽性者が増えてしまいます。
いくら感染者対策を厳しくできたとしても、偽陽性者が社会の許容範囲を超えて増えてしまうと、国民がPCR検査を信用しなくなります。陽性判定が出ても「どうせ偽陽性に違いない」と思われてしまっては、PCR検査を実施する意義が薄れてしまいます。

まとめ~基準で回っている

行政検査としてのPCR検査を実施する基準と、陽性と陰性をわける基準の2つの基準を紹介しました。

基準はもちろん、医学的な見地から決まるわけですが、社会的な制約によって多少ずれることがあります。社会的な制約とは、コストや財政や手間などのことです。
「もし」PCR検査が、コストも手間もかからなければ、全国民が受診したほうがよいでしょう。そうすれば、隔離すべき人を明確に判定できるので、感染対策はスムーズかつ効率的に進むからです。
しかし実際は、PCR検査は2万円ほどのコストがかかります。これを1億2千万人の国民全員に受けさせると2兆4千億円かかりますし、PCR検査だけで医療機関がパンクしてしまいます。

したがって、基準を設けて社会を回すことは、コロナ禍という有事では特に大切になります。

新宿 ヒロオカクリニックでは無症状の方を対象とした自費の新型コロナウイルスPCR検査(唾液)を2種類 実施しております。①PCR検査(医師の診察・結果報告書代込):税込14,850円、②PCR検査(医師の診察・結果報告書代込、変異株のスクリーニング検査対応、国内最大手の検査機関に委託):税込22,000円。詳細はこちら

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