変異種とは新たな生物のこと【新型コロナで話題になったことを掘り下げてみる】

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新型コロナ問題は収束の兆しをみせるどころか、デルタ株に続いてオミクロン株が猛威をふるい、むしろ混迷は深まっています。

ただ今回は猛威や混迷の話ではなく、生物学の話題です。

デルタ株やオミクロン株は、新型コロナの変異株であり変異種ではない、ということが少し問題になりました。

間違った使い方をしたマスコミに、学会が注意をしたのです。

では変異種とは何なのかというと、新たに誕生した生物のことです。

では、新たな生物はどのように誕生するのでしょうか。

生命の謎に、少し迫ってみます。

変異種と変異株の違い

日本感染症学会は2021年1月、各報道機関に向けて、新型コロナ関連のニュースで、変異株のことを変異種と呼んでいることがあるので注意して欲しい、という趣旨の声明を発表しました(*1)。

どちらも変異であることには違いないので、一般の人からすると大勢に影響はないように感じますが、両者はやはりまったくの別物なのです。

・変異株は、新しい性質を持った子孫のことで、生物の種類は変わらない
・変異種は、遺伝子の組み換えによって生まれた、新しい生物

デルタ株もオミクロン株も新型コロナのオリジナル株の変異株です。そのため、デルタ株もオミクロン株も依然として新型コロナのままです。

一方、もし新型コロナの変異種が発生したら、それは全世界を揺るがすことになるでしょう。なぜなら、新型コロナとはまったく異なる新たなウイルスが誕生したことになるからです。

新型コロナの変異種はいわば新型・新型コロナですが、それはまだ発生していません。

変異種とは新しい生物のこと

日本感染症学会は変異種を次のように定義しています。

・ごくまれに近縁の2つの生物種の間で多くの遺伝子の交換(組み換え)が起きると、2つの生物種の特徴をあわせ持った新しい生物種が誕生することがあり、これを変異種という

新しい生物(種)が誕生したときそれを変異種と呼びます。

つまり変異種を考えることは、新しい生物の誕生の謎に迫ることになります。

「生物の誕生」と「新しい生物の誕生」は異なる

ここで誤解してはいけないのは、新しい生物の誕生と、生物の誕生は異なるということです。

地球上にはかつて、生物が存在しませんでした。ところがある日、生物が登場しました。これが生物誕生です。

一方、新しい生物の誕生とは、現存する生物が変異してできたものです。変異種はこちらになります。

先に「生物の誕生」を解説します。

生物の誕生とは、生命がない状態から、生命がある状態が生まれたことを意味します。この無から有をつくったのは、化学反応です。

生命がない状態の地球上では、地質学的な反応が起き、それが無数の化学反応を引き起こしました。化学反応は別の化学反応につながり、それが厳しい環境に対応できる化学反応ネットワークを生み出しました。

その化学反応ネットワークが、代謝システムに進化して生物が成立したと考えられています。

代謝システムの誕生こそ、生命、生物の起源とされています。

代謝とは、エネルギーを獲得することであり、生命の維持に必要な体内の化学反応を起こすことでもあります。

例えば、人がものを食べてエネルギーにして生存できるのは、代謝のおかげです。

ではなぜ、無数の化学反応が、代謝システムがないところから代謝システムをつくったのでしょうか。国立研究開発法人海洋研究開発機構の研究員の北台紀夫氏は、深海の熱水が噴出している場所で電気が生じ、それが「生命の部品」を代謝システムに変え、生命をつくったのではないかと推測しています(*2)。

このような議論は、生物学だけでなく、地質学や天文学の分野でも行なわれています。

新しい生物の誕生はもっとマイルド

無から有が生じる生物の誕生が激しい変化だとしたら、すでに生物が存在する環境のなかで新しい生物が誕生する現象はマイルドな変化です。

人間と犬は、似ているともいえますし、全然違うともいえます。

頭があって体があって手足または足が4本あって心臓があって血液が流れているのは、人間も犬も同じですが、見た目はまったく違います。

そして、親と子はものすごく似ていますが微妙に違いますし、ときおり、親とはまったく似ていない子が生まれます。

このような現象が起きるのは、変異の起き方が異なるからです。

変異は遺伝のなかで起きます。

遺伝とは、親の形や性質が子に受け継がれる現象です。遺伝を行なっているのは、細胞のなかにあるDNAです。DNAに書かれてある情報のうち、遺伝に関わるものを遺伝子といいます。

生物が増殖するときに、遺伝子が複製されます。

複製、つまりコピーなので、子は親に似るのです。

普通は複製はうまくいきます。しかしその複製が失敗することがあります。その失敗のことを変異といい、変異が起きると子は親に似ません。

しかし、複製の失敗といっても、大々的な失敗が起きるわけではなく、少ししか違いません。そのため、子が親に似ないことはあっても、全然違う生物に変わることはありません。犬から猫が生まれないのはそのためです。

では変異種はどのようにして生まれるのか。

ほとんどの場合、子は親から遺伝子を受け取るわけですが、まれに、「近くの仲間」から遺伝子を受け取ることがあります。

「近くの仲間の遺伝子」とは「別の生物由来の遺伝子」と呼ぶことができます。

この、まれな現象(別の生物から遺伝子を受け取る現象)のことを「遺伝子の水平伝播」といいます。

水平伝播が長期間にわたって発生し続けると、変化がどんどん蓄積していって、「それはもう別の生物である」という状態になります。

この状態になった生物こそ、新しい生物です。

そしてこれこそが、変異種です。

まとめ

少々難しい話になりましたので、本記で解説したこと箇条書にしてまとめてみます。

・変異株は変化しただけで、新しい生物ではない
・変異種こそ新しい生物
・「生物の誕生」と「新しい生物の誕生」は別物
・地球にはかつて、生物がいなかった
・無数の化学反応が起きて代謝システムが誕生して生物が誕生した
・「新しい生物の誕生」は「生物の誕生」よりマイルドな変化
・遺伝子の複製に失敗したり「遺伝子の水平伝播」が起きたりすると、生物はかなり変わる
・生物の形と性質がかなり変わると、それは別の生物といわざるをえず、それが新しい生物である

変異種はこのように発生します。

これが変異種の正体であり、変異株とは全然違うことがわかります。

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