「内科とは何か」という一見簡単な質問に答えることは意外に難しい

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大人で内科を知らない人はいないと思います。どれだけ医療や健康に無関心な人でも「近所の内科クリニック」は知っているはずです。

その一方で、医療や健康に詳しい方でも「内科とは何か」という一見簡単そうな質問に正確に答えることは、簡単ではないはずです。

「内科とは〜」と一言で説明することはとても難しいので、さまざまな角度から内科を眺めてみて、その正体を明らかにしていきます。

内科とは身近な医療である

内科は医療機関の診療科の名称ですが、医学では内科学という学問の名称になっています。「内科学」という本があり、そこには次のように定義されています(*1)。

■書籍「内科学」の内科の定義

そもそも内科学(internal medicine)とは、患者の観察から出発し、それを体系的に把握して科学的に分析し、その病態生理および病因を明らかにすること。そしてその知見に基づいて新しい診断法や治療法を開発し、これを患者および社会に還元して医療の質向上を目指す学問である。

また、内科学はその診療分野として、幅広いプライマリ・ケアの段階から、臓器や器官を中心とした高度専門医療、さらには重篤な患者の救命治療や先端医療技術の実地診療への導入まで広い範囲の領域を担当する分野でもある。

手術などをおもに担っている外科学など、多くの医学・医療分野と密接な関連を有するとともに、その進歩には理学や工学といった異なる学問領域との連携も重要になっている。

一方、内科学は医療として社会と幅広い接点を有することから,社会の動向が敏感に反映される分野でもある。

 

難しい言葉が並んでいますが、ここからエッセンスを抜き出して平易な言葉に置き換えると次のようになります。

・内科のエッセンス1:内科学とは患者さんを観察して、科学的に分析して病気や原因を明らかにすること
・内科のエッセンス2:初期の診療、高度な専門医療、救命治療、先端医療まで網羅する
・内科のエッセンス3:手術を主な治療法として使う外科ではない
・内科のエッセンス4:社会と幅広く接する

エッセンス1と2は医療全体の特徴でもあるので、内科がこのような特徴を持っていることは直感的に理解できると思います。

エッセンス3は内科は外科とは違うといっており、その証拠に内科では手術という治療法を使いません。

そしてエッセンス4が意外に重要で、内科は社会との接触機会が多い医療分野です。多くの人が風邪をひいたら内科に行き、お腹が痛くなってもまず内科に行くと思います。

「内科」という言葉は「身近な医療」という意味で使われることもあります。

医療にはなぜ「内と外」が存在するのか

診療科にはさまざまな種類がありますが、まずは内科と外科にわかれます*2)。概念図で示すとこのようになります。

■診療科と内科と外科の概念図

診療科
内科(または一般内科) 外科(または一般外科)
○○内科 □□内科 △△内科 ○○外科 □□外科 △△外科

 

内科にも外科にも、○○内科などや○○外科などがあるのですが、何もつかない「内科」や「外科」もあります。そのため何もつかない内科や外科のことを一般内科や一般外科と呼ぶことがあります。

内科と外科の違いをあえて大雑把に説明すると、主に薬で治療するのが内科、手術で治療する外科となるでしょう。

手塚治虫の「ブラックジャック」をご存知でしょうか。この主人公のブラックジャックはメスを持って手術をして患者さんを治すので外科医です。ただブラックジャックは医師免許を持っていない設定になっています。作者の手塚治虫は医師免許を持っていて、外科医だったという説があります。

話を戻します。

内科医は主に薬を使って患者さんを治療しますが、ただし医療器具を使わないわけではありません。例えば、胃内視鏡や大腸内視鏡は消化器内科医が使い、内視鏡は小さな病変であれば切除することもできます。胃内視鏡で胃がんを切除して治すことすらあります。

またカテーテルという医療器具は、かつて手術で治していた病気を治すことができますが、大抵は循環器内科医が使っています。

そして話はさらに複雑になりますが、手術をする消化器外科医も胃内視鏡や大腸内視鏡を使って患者さんを治療することがあります。心臓外科医もカテーテルで治療することもあります。

またもちろん、外科医も薬を使って患者さんを治療することができます。

そのため先ほど紹介した「主に薬で治療するのが内科、手術で治療する外科」は、あくまで大雑把な区分けと理解しておいてください。

なぜ「迷ったら内科」なのか

もし原因不明の痛みに襲われたら、どこに行けばよいでしょうか。

そんな時は、「迷ったら内科」で大丈夫です。なぜなら内科には、病気を特定するという重要な役割があるからです。

内科医たちでつくる一般社団法人日本内科学会は内科を次のように説明しています(*3)。

■内科とは~日本内科学会の見解
内科学とは最初に患者に寄り添う学問であり、臓器を特定せず、さらには患者の心理・社会的側面をも考慮した全人的医療を目指すもの

内科医自身、患者さんに対して「最初に診せて欲しい」と考えているわけです。

そして内科は、医学の基礎の中心という位置づけになっています(*4)。

「○○内科」はなぜ存在するのか

一般の人が内科のことを難しいと感じるのは「○○内科」のせいだと思います。内科には一般内科の他に、専門的な内科である「○○内科」が数多く存在します。

例えば東大病院で内科診療部門に属す科には次のようなものがあります。(*5

■東大病院の内科診療部門の科
総合内科
循環器内科
呼吸器内科
消化器内科
腎臓・内分泌内科
糖尿病・代謝内科
血液・腫瘍内科
アレルギー・リウマチ内科
感染症内科
脳神経内科
老年病科
心療内科

東大病院には一般内科がなく、その代わりに総合内科があります。

その他の「○○内科」は、臓器や病気の名称が「内科」の前についています。したがって「○○内科」とは特定の臓器や特定の病気を内科的に治療する診療科である、といえます。

「○○内科」が増えたのは臓器や病気の研究が進み、1つの臓器や1つの病気に関する知見が爆発的に増えたので1人の医師ではすべての臓器や病気を診ることができなくなったからです。循環器を専門に診る医師や呼吸器を専門に診る医師がいたほうが、きちんと患者さんを治すことができます。

ちなみに、東大病院の総合内科も「迷ったら総合内科へ」という態勢になっていて、「症状や検査異常からは内科的疾患が疑われるものの診断がつかない方や、他診療科に受診されている方で内科的問題が生じた方」を診る、としています(*5)。

まとめ~かかりつけ医がいない方はぜひ

体調が悪くなったり健康が損なわれたりしたときに最初にかかる医者のことを、かかりつけ医といいます。

もしまだかかりつけ医を持っていなければ、内科クリニックの内科医をかかりつけ医にしてみてはいかがでしょうか。

内科医は臓器と病気のことを広く知っているので、薬で治る病気であればすぐに治してくれるでしょう。

そして内科医が重大な病気が疑ったら、専門の医師を紹介してくれるはずです。内科医は「つなぐ」役割も担っているからです。

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