幹細胞培養上清液とエクソソームの違いとは?わかりやすく解説
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近年、再生医療で注目されている幹細胞培養上清液を、点滴治療として提供するクリニックが増えています。美容や健康維持に良いとして一般にも浸透しつつあり、受診を検討している方もいるのではないでしょうか。
しかし、調べてみると「幹細胞培養上清液点滴」が「エクソソーム点滴」という治療名で書かれていたり、場合によっては「幹細胞培養上清液点滴(エクソソーム)」と書かれていたりして、この2つの成分は同じものなのか?違うものなのか?と疑問に思う方もいることでしょう。
そこでこの記事では、幹細胞培養上清液とエクソソームの違いと、含まれている成分や作用の違いから、どのような症状への効果が期待されているのかわかりやすく解説します。
幹細胞培養上清液とエクソソームはどう違うの?
結論からお伝えすると、「幹細胞培養上清液」は幹細胞を培養する際に使用した培養液の上澄みであり、「エクソソーム」は幹細胞培養上清液のなかに含まれる成分の名前です。
幹細胞培養上清液には、培養中の幹細胞が分泌した成長因子やタンパク質など何百種類もの成分が含まれています。そのうちの1つがエクソソームです。
つまり、幹細胞培養上清液とエクソソームは異なるものですが、幹細胞培養上清液にはエクソソームも含まれているのです。
幹細胞培養上清液もエクソソームも、美容や健康維持などを目的として、点滴や注射のメニューとして取り入れているクリニックが増えています。しかし、エクソソームだけを取り出すには高い技術が必要なため、現時点では純度100%のエクソソームを作るのは困難だといわれています。
このことから、実際のところ幹細胞培養上清液とエクソソームを使用した治療の違いはまだ厳密に定義されていないのが実情です。
そのため、幹細胞培養上清液を使用した治療でも「エクソソーム治療」と記載されている場合があることを知っておきましょう。
幹細胞培養上清液とは
幹細胞培養上清液点滴とエクソソームは異なるものであることがわかりました。では、結局ところ、どのような基準でどちらを選べば良いのでしょうか。
それを知るために、まずは幹細胞培養上清液についてくわしく解説します。
幹細胞とは
幹細胞とは、自分と同じ細胞を複製する能力、もしくは自分とは違う細胞をつくる能力が備わっている細胞のことを指します。
私たちのからだは多数の細胞でできています。怪我などによるダメージを受けたり、細胞の寿命が来たりすると、古い細胞から新しい細胞に入れ替わるのですが、このときに新しい細胞をつくるのが幹細胞です。
幹細胞には複数の種類があり、それぞれに能力や役割に違いがあります。幹細胞培養に使われているのは、そのうち「間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう)」という種類です。
間葉系幹細胞は、骨髄、脂肪、歯髄、へその緒、胎盤などに存在します。骨や筋肉、脂肪など複数の体の細胞を作り出せる能力(多分化能)があり、近年では再生医療の分野で利用されているのです。
幹細胞培養上清液の特徴
幹細胞培養上清液とは、幹細胞を人工的に増やすときに使用した培養液(ばいようえき)から幹細胞を取り出し、ろ過やウイルス検査など複数の処理をおこなった液体のことを指します。もともとは、幹細胞自体が治療効果の核であると考えられていたのですが、近年の研究により、細胞そのものよりも細胞が分泌する成分が、身体の健康や治療に役立つものであることが分かってきたため注目されるようになりました。
幹細胞培養上清液に幹細胞は含まれていませんが、幹細胞が分泌した成長因子をはじめ、サイトカイン、エクソソームなど500種類以上の成分が残っているため、美容や健康維持だけでなく、幅広い病気の治療への適応が期待されています。
幹細胞培養上清液に含まれる成分と働き
幹細胞培養上清液にはさまざまな成分が含まれており、細胞の増殖や活性化、免疫機能に対してポジティブな効果が期待されています。
ここでは、幹細胞培養上清液に含まれているおもな成分4つと、その働きについて解説します。
- ●成長因子
- ●細胞外マトリックス
- ●エクソソーム
- ●サイトカイン
成長因子
細胞の機能を調整して、傷の治癒や代謝に関わります。
その他にも成長ホルモンの分泌のほか、毛髪の生成も促します。
- ●FGF2 (線維芽細胞成長因子) :すでに存在する血管から新たな血管の新生を促し、血流を良くすることで傷の治癒を促します
- ●HGF (肝細胞増殖因子) :肝臓の治癒を促進するだけでなく、脳、心臓、腎臓、肺などの治癒に関係します
- ●VEGF (血管内皮増殖因子) :血管やリンパ管の新生に関係します
- ●IGF(インスリン様成長因子):インスリンに似た形をもち、細胞の増殖や代謝の調整に関わっています
- ●TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β):免疫機能や細胞の増殖を調整します
細胞外マトリックス
体の構造を支え細胞の機能を調節する役割があり、肌の保湿や修復を助け弾力を維持します。
- ●コラーゲン:細胞同士をつなぎ、体を構成するタンパク質の1種
- ●フィブロネクチン:細胞の接着や、細胞が増えたり分かれたりするのを調整します
エクソソーム
細胞間におけるコミュニケーションを担います。
エクソソームの中には、細胞同士の連携に必要なタンパク質や核酸などが含まれます。より詳細な内容は次項にて解説します。
サイトカイン
免疫反応や炎症反応を調整し、組織の修復を助けます。
- ●IL-6 (インターロイキン-6):免疫や炎症反応の調整をおこないます
- ●IFN(インターフェロン)(IFN):細菌やウイルスなど異物の侵入に対し、免疫の獲得に関与します
エクソソームとは
つぎに、幹細胞培養上清液に含まれている成分のひとつ「エクソソーム」について解説します。
エクソソームは、細胞から分泌される、直径30~150ナノメートルの小さな小胞です。タンパク質や脂質の膜で包まれた袋のような形をしています。
エクソソームの中には、様々なタンパク質や核酸など、様々な成分が含まれています。この内容物の組み合わせは様々あり、これによって期待できる効果も異なります。
また、一部のエクソソームには、内容物が特定の細胞に届くようにラベル付けされることもあり、これらの性質を利用して傷ついた組織修復の促進・がんの診断・病気の予防・慢性疾患の治療に活用する研究がおこなわれています。
幹細胞培養上清液とエクソソームに期待できること
一般的に、幹細胞培養上清液は以下のような症状に効果を発揮するといわれています。
- ●腰痛、肩こり、骨折
- ●神経痛、感覚麻痺
- ●頭痛
- ●倦怠感
- ●抹消循環障害
- ●老眼
- ●肌荒れ、しわ、たるみ
- ●更年期障害、不妊
- ●薄毛
一方、「エクソソーム」と呼ばれているものは、美容皮膚科でのしわ治療や、薄毛治療に用いられていることが多いようです。
幹細胞培養上清液を使用した治療について、よりくわしく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
幹細胞培養上清液とエクソソームのどちらを選ぶべき?使用方法の違いは?
どちらを選ぶか迷った場合は、「どのような効果を求めるか」で選ぶことをおすすめします。
たとえば、だるさや関節痛など複合的な症状で悩まれている方は多くの有効成分を含む「幹細胞培養上清液」を、美容や薄毛など特定の症状への効果を期待するのであれば「エクソソーム」を選ぶと良いでしょう。
自分で選ぶのが難しかったり、どうしても迷ってしまったりする場合には、治療前のカウンセリングで医師に相談することも可能です。その際、気になることや改善したい症状をメモしておくと、疑問を残さず解消したうえで、より良い方法を選択できるでしょう。
幹細胞培養上清液とエクソソームの使用方法の違い
幹細胞培養上清液とエクソソームは、どちらも使用方法に違いはありません。治療内容に合わせて、点眼・点鼻・ぬり薬・点滴・注射などで提供使用されています。
目や鼻、皮膚の一部など特定の部位への効果を期待して使用する場合は、点眼・点鼻・ぬり薬が良いでしょう。健康面や美容面の効果を期待して使用する場合は、点滴・注射だと全身に成分がいき渡るため効率的といえます。
幹細胞培養上清液やエクソソームの治療を受ける際の注意点
治療を受ける施設により治療費用、使用する幹細胞培養上清液やエクソソームの質に違いがあります。
不安なく治療を受けられるよう、治療前に以下の項目をチェックしておきましょう。
- ●使用する幹細胞培養上清液やエクソソームの安全性
- ●治療の回数や期間
- ●副作用の有無
- ●費用とその内訳
使用する幹細胞培養上清液やエクソソームの安全性
幹細胞培養上清液やエクソソームは、製品により品質に違いがあります。品質を評価するために、以下のような情報を確認すると良いでしょう。
- ●細胞を提供したドナーの年齢や健康状態
- ●どこの部位から採取された間葉系幹細胞を培養したか
- ●清潔な環境で製造されているか
- ●ウイルスやマイコプラズマなど定期的に検査がされているか
- ●第三者機関による安全性の確認はされているか
治療の回数や期間
幹細胞培養上清液やエクソソームで効果を実感するためには、定期的に治療を受ける必要があります。適切な回数や期間は、期待する効果や個々の状態によって異なりますので、医師と相談のうえ自分に適したペースで継続しましょう。
副作用の有無
幹細胞培養上清液やエクソソームによる治療で重篤な副作用が起こる可能性は極めて低いですが、可能性はゼロではありません。万が一気になる症状がでた場合にどう対応すべきかについても、事前の医師へ確認しておくと安心できるでしょう。
考えられる副作用は以下のとおりです。
- ●点滴挿入部の赤み、腫れ、痛み、内出血など
- ●アレルギー症状:発疹(皮膚のぶつぶつ)、かゆみ、じんましん
- ●低血糖症状:冷や汗、めまい、頭痛など
費用とその内訳
治療にかかる費用とその内訳についても確認しましょう。
点滴や注射など実際の治療にかかる費用のほか、施術前後に必要な検査や診察の費用などが別途で発生するケースもあります。
まとめ
幹細胞培養上清液とエクソソームの違いは、幹細胞培養上清液は複数の成分が入った混合物であり、エクソソームは単体の成分であるという点です。エクソソームは、幹細胞培養上清液の含まれる成分のひとつです。
幹細胞培養上清液とエクソソームのどちらを選ぶべきかについては、求めている効果によって判断することをおすすめします。幹細胞培養上清液のほうが含まれている成分が多いので、複合的な効果を求めるのであれば幹細胞培養上清液から試してみても良いでしょう。
適する成分や効果の現れ方には個人差があるため、最終的には医師と相談のうえ決めると安心です。
ただし、現時点では「エクソソームだけを幹細胞培養上清液から取り出す」という技術が確立されていないため、クリニックの治療メニューなどでエクソソームと書かれていても、実際には幹細胞培養上清液が使用されている場合があります。また、エクソソーム以外の不純物が含まれている可能性があることも知っておきましょう。
この記事を参考に、幹細胞培養上清液とエクソソームの違いを理解した上で、納得してから治療を受けるようおすすめします。
ヒロオカクリニックでは幹細胞培養上清液による治療をおこなっています。当院で使用する幹細胞培養上清液点滴は、以下のような安全管理が実施されておりますので、安心してお受けいただくことができます。
- ●CPC準拠のCPFにて製造
- ●各種ウイルス、細菌試験の徹底
- ●第三者機関による、有害タンパク質が含まれていないことの確認
- ●非臨床試験による、有害事象が認められないことの確認
- ●1,500例を超える臨床実績
東京で幹細胞培養上清液点滴をご検討中の方は、ぜひご来院ください。